アマゾンから「セットトップボックス(STB)」型のストリーミングコンテンツ再生端末「Amazon Fire TV」が発表されました。発売日は10月28日で、価格は1万2980円(税込み&送料込み)。アマゾンではすでに予約販売が開始されています。
アマゾンの発表からさかのぼること約1週間、Appleからは新型セットトップボックス「Apple TV」が発表されていました。こちらは10月下旬の発売で、価格は140ドルから。国内での販売も予定されていますが、価格はまだ公表されていません(2015年9月28日時点)。
ネット動画やゲームなどを楽しむために、Amazon Fire TVとApple TVのどちらを選べばいいのか迷っている人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、両モデルのスペックや機能の違いについて解説します。
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- Amazon Fire TV(Amazon.co.jp)
- Apple TV(Apple)
10月28日追記
Fire TVのレビュー記事を掲載しました。ぜひこちらもご覧ください。
Amazon Fire TVとApple TVでデキること
それぞれの特徴を紹介する前に、まずはAmazon Fire TVとApple TVはどんな端末なのかを確認しておきましょう。両機種ともネットワーク上のコンテンツ(ドラマやアプリなど)を楽しむためのデバイスで、「セットトップボックス(STB)」とも呼ばれます。ただし従来のケーブルテレビ用セットトップボックスなどとは異なり、いろいろなアプリを利用したり、いろいろな機器を接続できるなど、できることが増えてきているのが特徴です。
Amazon Fire TVやApple TVでできること | ||
Amazon Fire TV | Apple TV | |
---|---|---|
映画のレンタル/購入 | ◯ | ◯ |
ドラマやバラエティなどのレンタル/購入 | ◯ | ◯ |
アプリ/ゲームの利用 | ◯ | ◯ |
音楽の再生 | ◯(Amazonミュージックライブラリを利用) | ◯(iTunes/Apple Musicを利用) |
写真の閲覧 | ◯(Amazon Cloud Driveを利用) | ◯(iCloudを利用) |
セットトップボックス型端末はDVDプレーヤーやHDDレコーダーのように、テレビに接続してリモコンで操作します。初回利用時にアカウントやネット接続の設定を行なう必要がありますが、一度設定すればあとは必要ありません(ただしアプリの利用に個別設定が必要な場合もあります)。ちなみにAmazon Fire TVは購入時に利用したアカウントが設定済みですので、ネットに接続するだけで利用できます。
Amazon Fire TVとApple TVのスペックを比較
続いて、両モデルの仕様を確認してみましょう。それぞれの主なスペックは、以下の表のとおりです。参考までに、2013年に発売された第3世代のApple TVのスペックもまとめています。前モデルは継続販売されるとのことですので、候補のひとつとして考えてもいいかもしれません。
Amazon Fire TVとApple TVのスペックの違い | |||
モデル名 | Amazon Fire TV | 新しいApple TV(第4世代) | Apple TV(第3世代、MD199J/A) |
---|---|---|---|
価格 | 1万2980円(税込み&送料込み) | 140ドル(32GBモデル、約1万6900円、税別) | 8200円(税別) |
OS | ※表記なし | tvOS | Apple TV ソフトウェア |
プロセッサー | MediaTek クアッドコアプロセッサ(2.0GHz×2+1.6GHz×2) | Apple A8(デュアルコア) | Apple A5(シングルコア) |
グラフィックス | PowerVR GX6250 | PowerVR GX6450 | PowerVR SGX 543MP2 |
メモリー | LPDDR3 2GB | ※非公開(2GB) | ※非公開(512MB?) |
ストレージ | 8GB | 32/64GB | ※非公開(8GB) |
映像出力 | 3840×2560ドット(30fps)、1920×1080ドット/1280×720ドット(60fps) | 1920×1080ドット/1280×720ドット(60fps) | 1920×1080ドット/1280×720ドット(60fps) |
オーディオ出力 | Dolby Digital 5.1 | Dolby Digital 7.1 | Dolby Digital 5.1 |
通信機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac(2×2 MIMO)、Bluetooth 4.1、100BASE-TX対応有線LAN | IEEE802.11a/b/g/n/ac(2×2 MIMO)、Bluetooth 4.0、100BASE-TX対応有線LAN | IEEE802.11a/b/g/n、Bluetooth 4.0、100BASE-TX対応有線LAN |
インターフェース | USB2.0、HDMI、有線LAN、microSDカードスロット(最大128GB) | USB-C(メンテナンス用)、HDMI、有線LAN、赤外線 | microUSB(メンテナンス用)、HDMI、有線LAN、赤外線、S/PDIF |
サイズ | 幅115×奥行き115×高さ17.7mm | 幅98×奥行き98×高さ35mm | 幅98×奥行き98×高さ23mm |
重量 | 270g | 425g | 272g |
リモコンのサイズと重量 | 幅38.4×奥行き150.7×高さ16.7mm/45g | 幅38×奥行き124×高さ6.3mm/47g | ※非公開 |
表のなかで文字が赤くなっている部分は、筆者が特に優れていると感じた部分です。簡単にまとめると、以下のようになります。
Amazon Fire TV(本体)の優れている点
- クアッドコアのプロセッサを搭載
- 2560p(3840×2560ドット)の4K再生に対応
- microSDカードスロットを用意
Apple TV(本体)の優れているところ
- ストレージ容量が大きい
- グラフィックス性能がAmazon Fire TVよりちょっと上(かもしれない)
- ドルビーデジタルの7.1chに対応
Amazon Fire TVは2560pの4Kコンテンツに対応
上記のなかでも特に注目したいのは、Amazon Fire TVが4Kコンテンツの再生に対応している点です。価格は税込み&送料込みで1万2800円ですから、4K対応プレーヤーとしては現時点で最安クラスではないでしょうか。
最近は4K対応テレビが普及しつつあり、またYouTubeやNETFLIXなどの動画サービスでも4Kコンテンツの配信が始まっています。アマゾンが運営する「Amazonビデオ(プライム・ビデオを含む)」でも、4Kコンテンツが用意されています。4Kの美しい映像を堪能したいなら、Amazon Fire TVを選ぶべきでしょう。
実際の処理能力の差は(いまのところ)不明
プロセッサについては、スペック上ではクアッドコアのAmazon Fire TVのほうが優れているような印象を受けます。ただしベンチマークテストなどで実際の性能を計測しないかぎり、どちらが優れているのかはわかりません。このあたりについては、別の機会に検証する予定です(Amazon Fire TVは予約しており、Apple TVも購入予定です)。
ストレージ容量はApple TVのほうが大きい
Apple TVがハードウェア的に優れているのは、ストレージ容量が大きい点です。Amazon Fire TVのストレージは8GBしかありませんが、Apple TVは32/64GBと4倍または8倍の容量を搭載しています。
ただしAmazon Fire TVは最大128GBまでのmicroSDカードに対応しており、ゲームやアプリをメモリーカードに保存することが可能です。外部ストレージをどの程度活用できるのかはいまのところ不明ですが、Apple TVが持つストレージ容量のアドバンテージはあまり大きくないのかもしれません。
Bluetooth 4.0と4.1の差は考えなくてもOK?
通信機能については、両モデルとも有線/無線/Bluetoothに対応しています。しかしApple TVがBluetooth 4.0対応なのに対して、Amazon Fire TVはBleutooth 4.1対応である点が異なります。Bluetooth 4.1にはデータ転送速度の高速化やIPv6への対応、自動再接続機能の強化などの特徴がありますが、ソフトウェアのアップデートにより4.0から4.1へのアップグレードが可能とのこと。Appleが対応さえすれば、Apple TVでもBluetooth 4.1を利用できるようになるかもしれません。その意味で、4.0と4.1の違いを意識する必要はないと言えます。
リモコンはApple TVのほうが高機能
Apple TVのリモコンは「Siri Remote」と呼ばれ、名前からもおわかりのように音声検索機能「Siri」を利用することができます。またタッチ操作が可能な「Touchサーフェス」を用意しているほか、加速度センサーやジャイロセンサーなども搭載しています。おそらく今後、リモコンを上下左右に動かして操作するゲームが登場するかもしれません。
一方のAmazon Fire TVはタッチ操作ではなく、ボタンを使って操作します。また音声検索用のマイクも搭載されていますが、Amazonビデオやプライム・ビデオのコンテンツまたはアプリにしか対応していません。Siriが幅広くなんでも検索できることを考えると、Amazon Fire TVの音声検索は利用範囲が限られており少々残念です。
なおリモコンの電源については、Amazon Fire TVが単4電池2本で12ヵ月利用できるのに対し、Apple TVはバッテリー内蔵で3ヵ月間の利用が可能とのことです。
コンテンツ面ではApple TVのほうが有利
続いて、それぞれをコンテンツ面から検証してみましょう。
対応アプリの数は意外に少ない?
Amazon Fire TVはAndroid端末の一種ですが、アプリのダウンロードにはグーグルのPlayストアではなく、アマゾンが運営する「Amazon Androidアプリストア」を利用します。ストアに登録されているアプリの数は約39万本(2015年9月下旬時点)で、Playストアの140万本(2014年時点)と比べると1/3以下です。Amazon Fire TV対応アプリの数はさらに少なく、2015年9月28日時点では3347本でした。
対応アプリ3347本のうちゲームは914本で、無料ゲームは394本です。残りはすべて有料ゲームで、もっとも作品の多い価格帯は100~199円でした。人気作品は有料ゲームに中心という点が、ほかのアプリストアと異なる特徴だと言えます。
一方のApple TVは新モデルからApp Storeが利用可能となり、アプリをダウンロードできるようになりました。iTunes App Storeに登録されているアプリの数は、2015年6月時点で150万本以上とのこと。ただしApple TVが対応するアプリの本数は、アプリ総数からグッと少なくなることが予想されます。
Apple TV対応アプリの数がまだ公開されていないため、どちらのほうがアプリが多いとは言えない状況です。しかしタッチ操作を前提としたアプリについては、おそらく対応は難しいでしょう。たとえば仮想ゲームパッドを利用する「マインクラフトPE」なら外付けのコントローラーを用意することで対応可能ですが、画面を直接触ってパズルをする「パズドラ」はインターフェース的に厳しいかもしれません。そう考えると、Apple TVで利用できるアプリの数はiPhoneやiPadほど多くはならないと予想されます。
それでもアプリの母数が多いことを考えれば、Apple TVのほうが対応アプリ数が多くなるかもしれません。実際のところはサービスが開始されてみないとわかりませんが、ある程度期待はできると思います。
ちなみに、Amazon Fire TVはBluetoothのゲームコントローラーが利用可能で、純正品に最適化されているとのことです。Apple TVでもゲームコントローラーを利用可能ですが、「MFi」と呼ばれるAppleのライセンス認証を受けた製品を利用する必要があります。
音楽の扱いやすさはApple TVのほうが上?
Appleとアマゾンのストアで販売されている楽曲の数はiTunesミュージックストアが4300万曲以上であるのに対し、Amazonデジタルミュージックは2500万曲以上。またiTunesで販売されている曲はAAC形式であるのに対し、AmazonデジタルミュージックではMP3形式を採用しています。どちらも平均ビットレートが256kbpsですので、音質についてはそれほどの違いは感じられないかもしれません。
楽曲の管理については、iTunesと連携できるApple TVのほうが扱いやすいのではないでしょうか。iTunesではアプリの管理も行なうので、iPhone/iPadユーザーなら頻繁に利用しているでしょう。Apple製品を一切使っていないという人ならそれほど違いはないかもしれませんが、iPhoneやiPad、MacあるいはWindowsでiTunesを使っているなら、楽曲を共有できるという点でApple TVのほうが便利かもしれません。
動画配信サービスは?
YouTubeやNETFLIX、Huluなどの動画配信サービスについては、両モデルともアプリを介して再生します。どちらも主要なサービスには対応しているので、それほど大きな違いはありません。そのため動画サービスで判断するなら、「Amazonビデオ」と「iTunesストア」のどちらを選ぶかということになります。
本数や価格、ラインナップについては不明な点もあり、またユーザーの好みの別れるところですので、別の機会に検証したいと思います。ただ「Amazonビデオ」にはプライム会員なら無料で視聴できる「プライム・ビデオ」というサービスが用意されているのに対して、iTunesストアには似たようなサービスはありません。また4Kコンテンツを配信しているのも、Amazonビデオのほうだけです。この点に魅力を感じるのであれば、Amazon Fire TVを選ぶのいいでしょう。
以上のように、コンテンツ面で見るとApple TVのほうがやや有利と言えるかもしれません。今回はコンテンツの数だけでしか考察していませんが、発売後に実機が届いたら操作性などを含めてレポートする予定です。
価格と4K対応で選ぶならAmazon Fire TV、デバイス連携ならApple TV
ということで、今回はAmazon Fire TVとApple TVを比較してみました。価格の安さや4Kコンテンツへの対応を重要視するなら、断然Amazon Fire TVがおすすめです。Apple TVの新モデルは4K非対応で発売されますので、少なくともあと1年間は4Kコンテンツには対応しないものと思われます。今後ますますテレビや動画配信サービスが4Kに対応することが予想されますので、その点でAmazon Fire TVには将来性があると言えるでしょう。
ただiPhone/iPadとの連携やiTunesストアで購入したコンテンツを利用するには、Apple TVのほうが断然有利です。いつも使っているのがApple製品メインなら、Apple TVを選んだほうが便利でしょう。また今後、Apple TVならではのユニークなアプリが登場する可能性もあります。
結論としてポイントは「4K」か「他デバイスとの連携」ということですが、別の選択肢として「どちらか迷ったら両方買う」という手もありまして、両方使ってみて気に入ったほうを使い続け残ったほうは話のネタにするというのもまた一興かと思うわけです。
という話はさておき、当サイトではAmazon Fire TVとApple TVの実機を使った比較レビューをまとめる予定ですので、掲載までしばらくお待ちください。
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- Amazon Fire TV(Amazon.co.jp)
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