レノボの「IdeaPad Duet Chromebook」は、10.1インチサイズのChrome OS搭載タブレットです。発売は2020年6月。タブレット本体とキーボードのセットで実売4万円台前半と値段が安いことから、発売当時は爆発的に売れました。一時は店頭の実売台数で、iPadを超えたこともあるそうです。

IdeaPad Duet Chromebook
筆者も過去に別メディアで、IdeaPad Duet Chromebookをレビューしています。当時はこれが4万円台前半の価格で買えるのかと、とても感心しました。
リンク
「こういうのが欲しかった!」 ― お手頃な10.1型の2 in 1タブレット<IdeaPad Duet Chromebook>レビュー(ASCII.jp)
それから1年半以上たった2022年になって、「IdeaPad Duet Chromebookを貸すけどレビューしない?(意訳)」的な案内がありました。正直いまさら感はあるものの、いま改めて触ったらどんな印象を受けるのか興味があったので再度検証したしだいです。

2020年6月発売の人気機種を改めて検証
そんなわけで今回は、2022年の視点でIdeaPad Duet Chromebookのデザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

スペック
OS | Chrome OS |
---|---|
ディスプレイ | 10.1インチ、1920×1200、IPS、光沢、タッチ対応 |
CPU | MediaTek Helio P60T |
メモリー | 4GB |
ストレージ | 128GB eMMC |
通信 | 11a/b/g/n/ac + Bluetooth 4.2 |
キーボード | 日本語配列 |
インターフェース | USB 2.0 Type-C×1 (USB PD / 映像出力対応) |
生体認証 | なし |
カメラ | フロント200万画素、リア800万画素 |
サイズ / 重量 ※タブレット | 幅239.8×奥行き159.8×高さ7.35mm / 約450g |
バッテリー | 約10時間 |
自動更新ポリシー | 2028年6月 |
付属品 | 電源アダプター、キーボード、スタンドカバー、USB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルなど |
本体デザイン

IdeaPad Duet Chromebookは、Chrome OS搭載のタブレットです

背面はグレーとブルーの組み合わせで、意外にポップな印象

ベゼルは最近の機種と比べるとやや太めの印象です

付属のスタンドカバー。磁石入りでタブレット背面に装着できます

スタンドカバーはキックスタンド付き。自立時の角度をある程度調整可能です。比較的頑丈に作られているものの、無理に動かすと壊れそうなので注意

スタンドカバーを装着して自立している様子

さらに付属のキーボードを装着すれば、ノートPCのように利用できます

インターフェースはUSB2.0 Type-C (USB PD / 映像出力対応)のみ。端子類はかなり少なめ

スピーカーは上面配置。音量は十分な上にサラウンド感も上々ですが、低音域に厚みがありません。本体がこれだけ薄ければ仕方がないでしょう。個人的には予想以上に高音質でした

充電には5VタイプのUSB充電器を使用。重さは62g
サイズと重量

サイズは幅239.8mm、奥行き159.8mm。B5サイズよりもひと回り小さい程度です

本体の厚さは実測で7.4mm。カメラのレンズ部分は9.3mm。10インチクラスとしては極薄です

キーボードとスタンドカバー装着時は18.3mm。ちょっとしたノートPC程度の厚さです

キーボード&スタンドカバー装着時の重さは935g。タブレット本体は450g前後ですが、タブレットだけで持ち歩くことはないはず

10.1インチタブレットとしてはそれなりの重さですが、同価格帯のノートPCよりははるかに軽量です
ディスプレイについて

画面サイズは10.1インチで解像度は1920×1200ドット。標準では178%拡大されているので、文字表示は1080×675ドット相当。ドットバイドットだと、かなり小さく見えます

公称値では色域は70% NTSC。やや寒色系に見えますが、基本的には自然な色合いで違和感はありません

明るさは公称値で400nit。体感的にはそこまで明るくない印象ですが、十分な明るさです

光沢ありのグレア仕上げのためコントラストが高く、色が鮮やかに映し出されています
キーボードについて

キーボード面

バックライトなしの日本語配列。素材には硬度の高い樹脂が使われています

Enterキー周辺のキーがかなり窮屈。キーピッチは英数字キーで17.8mm、Enterキー周辺で12.3mm

キーボードは接地面に寝かせて使用。薄型なので底打ち感が強く、板を叩いているような感覚です

キーの間隔が狭いので、指先で打つように意識するといいでしょう。キーストロークは1.2mm前後と浅いものの、クリック感が固いので手応えはしっかり感じられます

別売りのUSIペンがあれば、手書き入力が可能です ※写真のペンはHP製
ベンチマーク結果
テスト機のスペック
CPU | MediaTek Helio P60T |
---|---|
メモリー | 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
グラフィックス | Mali-G72 MP3 (CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
Octane 2.0
IdeaPad Duet Chromebookで使われているMediaTek Helio P60Tは、2018年にリリースされました。当時はミドルレンジ向けでしたが、4年たったいまとなっては性能的にはエントリークラスです。
ブラウザーによるJavaScritの処理速度を計測する「Google Octane 2.0」では、エントリー向けChromebookのなかでもかなり低い結果が出ています。位置付け的には「下の下」といったところ。発売から1年以上経過したモデルであることを考えれば、仕方がないでしょう。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Octane 2.0スコア |
---|---|
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 55846 |
HP x360 13c (Core i7-10510U) | 48847 |
HP x360 14c (Core i3-10110U) | 43914 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 29424 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 23518 |
HP 14a(Pentium N5030) | 21124 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 19455 |
CB314(Celeron N4020) | 17922 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 16810 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 16471 |
IdeaPad Slim 350i (Celeron N4020) | 15729 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 11585 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 11114 |
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) | 10490 |
IdeaPad Flex 360 (MediaTek MT8183) | 9934 |
Acer Spin 311 (MediaTek M8183C) | 9870 |
CrXPRT 2
「CrXPRT 2」はChrome OS搭載デバイスの総合性能の計測する、HTML 5ベースのベンチマークテストです。このテストでも上記テストと同じく、低めのスコアが出ました。
ベンチマークスコアの比較
CPU | CrXPRT 2 Performanceスコア |
---|---|
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 141 |
Acer 712 C871T-A38N (Core i3-10110U) | 110 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 96 |
HP 14a(Celeron N4500) | 75 |
HP 14a(Pentium N5030) | 70 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 70 |
FMV Chromebook WM1/F3(Celeron 6305) | 69 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 66 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 61 |
CB314(Celeron N4020) | 59 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 55 |
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) | 54 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 42 |
IdeaPad Flex 360 (MediaTek MT8183) | 40 |
ASUS CM3 (MediaTek MT8183) | 39 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 37 |
GeekBench 5
GeekBench 5はCPU性能を計測するベンチマークテストですが、マルチコア性能を計測するテストではコアの数が大きく影響します。そのためChromebook全体のなかでは中位クラスの結果が出ていますが、これは実際の体感速度を表わすものではないので注意してください。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Geekbench 5 マルチコアスコア |
---|---|
HP x360 13c (Core i7-10510U) | 3146 |
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 2187 |
HP x360 14c (Core i3-10110U) | 2209 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 1769 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 1503 |
HP 14a(Pentium N5030) | 1428 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 1427 |
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) | 1422 |
IdeaPad Flex 360 (MediaTek MT8183) | 1403 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 1393 |
Acer Spin 311 (MediaTek M8183C) | 918 |
CB314(Celeron N4020) | 910 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 880 |
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) | 792 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 696 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 514 |
シングルのコアのテストでは、ほかのテストと同様に「下の下」クラスの結果が出ています。実際の体感速度はこのあたりと考えたほうがいいでしょう。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Geekbench 5 シングルコアスコア |
---|---|
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 1143 |
HP x360 14c (Core i3-10110U) | 1015 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 726 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 558 |
HP 14a(Pentium N5030) | 511 |
CB314(Celeron N4020) | 483 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 461 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 447 |
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) | 426 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 397 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 301 |
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) | 301 |
IdeaPad Flex 360 (MediaTek MT8183) | 299 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 270 |
PCMark / 3DMark
アプリによる軽めの作業の快適さを計測するPCMarkでも低めの結果でした。3Dグラフィックス性能を計測する3DMarkでも同様です。このあたりの結果だと、最新型のミドルレンジスマホのほうが高性能かもしれません。
ベンチマークスコアの比較
CPU | PCMark Work 2.0スコア |
---|---|
ASUS Flip C436FA (Core i7-10510U) | 11966 |
HP x360 14c (Core i3-10110U) | 11792 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 11179 |
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 11135 |
HP 14a(Pentium N5030) | 9455 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 9364 |
CB314(Celeron N4020) | 9052 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 8714 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 8249 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 8191 |
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) | 8011 |
IdeaPad Flex 360 (MediaTek MT8183) | 6743 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 6730 |
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) | 6655 |
Acer Spin 311 (MediaTek M8183C) | 6307 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 5195 |
ベンチマークスコアの比較
CPU | 3DMakr Sling Shotスコア |
---|---|
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) | 7374 |
HP x360 13c (Core i7-10510U) | 5522 |
HP x360 14b(Pentium N6000) | 4704 |
HP x360 14c (Core i3-10110U) | 4172 |
HP x360 14b (Pentium N5000) | 2780 |
Acer Spin512 (Celeron N4100) | 2636 |
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) | 2538 |
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) | 2247 |
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) | 2245 |
HP 14a(Pentium N5030) | 2203 |
CB314(Celeron N4020) | 2095 |
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) | 1805 |
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) | 1796 |
Acer Spin 311 (MediaTek M8183C) | 1458 |
ASUS C223NA (Celeron N3350) | 1445 |
ブラウザーの使用感
Google Chromeでアマゾンのページを20ページ同時に開いたところ、各ページの読み込みにしばらく時間がかかったものの、1分程度して読み込みが終わったあとなら普通にページを閲覧できました。読み込み中だと、ページのスクロールがカクつきます。
またタブを20ページ開いた状態で音楽配信サービス、Googleドキュメント、ちょっとしたWebアプリ等を使用したところ、普通に使えるもののわずかな「間」を感じます。処理によっては、ちょっと時間がかかるように感じるかもしれません。このあたりは人によって「サクサク」か「サクサクではない」かの判断がわかれるでしょう。
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で約10時間とされています。画面の明るさを最大にした状態でCrXPRT2のバッテリーテストで駆動時間を計測したところ、なぜか公称値よりも大幅に長い16時間52分でバッテリー切れとなりました。テストを複数回繰り返しても同じ結果だったので、ミスやエラーではないと思われます。実際の作業でここまでもつかは不明ですが、ほかのChromebookと比べてバッテリー駆動時間は長そうです。
バッテリー駆動時間の比較
CPU | CrXPRT2バッテリーテスト |
---|---|
IdeaPad Duet | 16時間52分 |
HP x360 14b | 8時間48分 |
Lenovo 14e Gen2 | 7時間27分 |
FMV Chromebook 14F | 6時間50分 |
ASUS Detachable CM3 | 6時間13分 |
他機種との違い
2021年3月にASUSから、IdeaPad Duet Chromebookと同タイプのChrome OSタブレット「ASUS Chromebook Detachable CM3(以下、”CM3″)」が発売されました。現在の価格は4万円台半ばですが、セールしだいでは2~3万円台で販売されることもあります。

ASUS Chromebook Detachable CM3
CM3の特徴としては、「標準でペンが付いている」点と「画面サイズがやや大きい」点が挙げられます。ただし前述のベンチマーク結果をご覧いただくとおわかりのように、CM3のほうが発売はあとであるにも関わらず性能的には変わりません。外観や機能の好みで選ぶといいでしょう。
スペックの違い
Duet | CM3 | |
---|---|---|
ディスプレイ | 10.1インチ | 10.5インチ |
パネル | 1920×1200、IPS、光沢、タッチ対応 | |
CPU | MediaTek Helio P60T | MediaTek MT8183 |
メモリー | 4GB | |
ストレージ | 128GB eMMC | |
インターフェース | USB Type-C×1 (USB PD / 映像出力対応) | |
サイズ ※タブレット時 | 幅239.8×奥行き159.8×高さ7.35mm | 幅255.44×奥行き167.2×高さ7.9mm |
重さ ※タブレット時 | 約450g | 約506g |
バッテリー | 約10時間 | 約12時間 |
自動更新ポリシー | 2028年6月 | |
ペン | なし | 付属 |

ASUS Chromebook Detachable CM3(左)とIdeaPad Duet Chromebook(右)

CM3(左)のほうが画面が0.4インチ大きいぶん、本体も大きめです

キーボードの配列も似たような感じですが、CM3のほうが若干余裕があります

カバーを付けた状態の見た目はほとんど変わりません

CM3は付属のペンで、手書き入力も行なえます
名機だけどやや時代遅れ感あり
2020年発売のIdeaPad Duet Chromebookを2022年に改めて使って感じたのは、以前よりも動作が若干重く感じる点です。2020年の発売当時は、もうちょっと軽快に使えていたような気がします。
ただしこれはIdeaPad Duet Chromebookの性能が落ちたわけではなく、最近のChromebookがより高性能になっていたり、扱うデータがより高度化しているためかもしれません。ぶっちゃけて言えば、徐々に時代に合わなくなってきているということでしょう。
人によってはいまでも「動作がサクサク」と感じるかもしれませんが、少なくとも筆者にとってはサクサクではありませんでした。なにかにつけて、一瞬の間を感じます。

以前よりも処理時間が長くかかるように感じます
さらに言ってしまえば、タブレットとしてならiPadのほうが格段に上です。動画を観たりゲームを楽しんだりするなら、iPadを購入したほうが満足感は高いでしょう。
ただしそれでもタブレットをPC的に使いたい――たとえばデュアルディスプレイ環境で使いたいとか(外部出力は1920×1080@30Hzなので注意)、フル機能のChromeブラウザーを使いたいとか、ウィンドウを複数同時に表示したいなど――のであれば、いまでも悪くはない選択だと思います。同カテゴリーのCM3は、ペンが付属する以外の大きなメリットはありません。
現在の相場からすると4万円台はやや高い気がしますが、3万円台半ばで入手できるならアリです。どちらかと言えば実用的に使うよりも、安く買っていろいろ遊ぶガジェットとしておすすめします。

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