AMDのAthlon 300Uは、2019年1月に発表されたノートPC向けのCPU (※)です。同年発売の格安ノートPCで使われています。
2019年9月時点でAthlon 300Uを搭載したノートPCは、レノボのIdeaPad S340 (14, AMD)のみです。ノートPCの販売価格は税込3万8610円で、価格帯としてはインテルのCeleron / Pentiumシリーズと同等。しかし性能は大きく上回っており、当サイトの計測のベンチマークテストではCore i3に匹敵するほどでした。価格が安いわりに性能が高く、コスパの高いCPUです。
※本来はグラフィックス機能を内蔵するAMD製プロセッサーのことを「APU」と呼びますが、この記事では混乱を防ぐために「CPU」と表記しています
CPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i5-8265U |
8851
|
Core i3-8145U |
5549
|
Athlon 300U |
4703
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Core i3-7020U |
3679
|
Celeron 4205U |
2026
|
Celeron N4000 |
1553
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Athlon 300Uのスペック
世代 | 第2世代 Ryzen Mobile |
---|---|
開発コード | Zen |
コア数 / スレッド数 | 2 / 4 |
動作周波数 | 2.4GHz |
最大動作周波数 | 3.3GHz |
TDP | 15W |
内蔵グラフィックス | Radeon Vega 3 |
Athlon 300Uの用途
ゲーム | |
---|---|
動画編集 | |
RAW現像 | |
3D制作 | |
デザイン | |
イラスト | |
DTM | |
ビジネス |
※ノートPC向けCPUとしての評価
この記事ではこれからノートPCを購入しようとしている方のために、Athlon 300Uの性能について紹介します。
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Athlon 300U概要
Athlonシリーズは、AMDのノートPC向けCPUのなかでは中位クラスにあたります。どちらかと言えば性能よりも価格の安さを重視しているため、パフォーマンスはそれほど高いわけではありません。とは言え、さらに安いEシリーズ (E2-9000など)やAシリーズ (A4 / A6など)よりは高性能です。
AMDノートPC向けプロセッサーの種類
E / Aシリーズ (下位) |
とにかく価格の安さを重視 |
---|---|
Athlonシリーズ (中位) |
価格の安さを重視しつつ少し高性能 |
Ryzenシリーズ (上位) |
価格と性能のバランスを重視 |
Athlon 300UとRyzen 3 3200Uの違い
AMDのノートPC向けCPUでは、Athlon 300UよりもRyzen 3 3200Uのほうがよく使われています。スペック上はあまり変わらず動作周波数がRyzen 3 3200Uのほうが若干上なのですが、体感できるほどの性能差はないかもしれません。場合によってはAthlon 300Uのほうが上回ることもあるでしょう。
Athlon 300UとRyzen 3 3200Uのスペック比較
Athlon 300U | Ryzen 3 3200U | |
---|---|---|
開発コード | Zen | Zen |
コア数 / スレッド数 | 2 / 4 | 2 / 4 |
動作周波数 | 2.4GHz | 2.6GHz |
最大動作周波数 | 3.3GHz | 3.5GHz |
TDP | 15W | 15W |
内蔵グラフィックス | Radeon Vega 3 | Radeon Vega 3 |
Athlon 300Uのベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Athlon 300U本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
5万円以上の一般的なノートPCでは、インテルのCore iシリーズがよく使われています。価格が高いだけあって、これらのCPUと比べるとAthlon 300Uの性能はやや控えめ。とは言え3年前のノートPCで使われていたCore i5-7200U相当のパフォーマンスで、格安ノートPC向けCPUとしてはかなり健闘していると言っていいでしょう。
CPUの性能比較(一般向けノートPC)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-8565U |
9699
|
Core i7-8550U |
9009
|
Core i5-8265U |
8851
|
Core i5-8250U |
8385
|
Ryzen 5 3500U |
8246
|
Core i7-7500U |
5564
|
Core i3-8145U |
5549
|
Core i3-8130U |
5527
|
Core i5-7200U |
4949
|
Athlon 300U |
4703
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Core i3-7100U |
3785
|
※スコアは当サイト計測値の平均
格安ノートPC向けCPUとの比較
2~4万円台の格安モデル向けCPUのなかでは、Athlon 300Uはトップクラスの性能です。3万円前後で性能が極端に低いCPUを搭載したモデルよりも、3万円台後半のAthlon 300U搭載モデルのほうがおすすめ。ストレージがHDDではなくSSDであれば、格安モデルとしてはかなり快適に使えます。
CPUの性能比較(格安ノートPC)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Athlon 300U |
4703
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Core i3-7020U |
3769
|
A9-9420 |
2928
|
Pentium N5000 |
2650
|
Celeron N4100 |
2569
|
Celeron 4205U |
2026
|
Celeron 3865U |
2016
|
AMD E2-9000 |
1898
|
Celeron N4000 |
1553
|
※スコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
Athlon 300Uではグラフィックス機能として、CPU内蔵のRadeon Vega 3を使います。性能的にはCore i3内蔵のIntel UHD Graphics 620よりもやや上の程度。エントリー (初心者)向けゲーミングノートPCで使われているGTX 1050 / 1650と比べると、性能はかなり劣ります。解像度や画質を調整すればごく軽いゲームをなんとかプレーできますが、基本的にはゲームのプレーは考えないほうが無難です。
グラフィックス性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
9039
|
GTX 1050 |
5858
|
MX250 |
3595
|
MX150 |
3385
|
UHD 620 (Core i7) |
1270
|
UHD 620 (Core i5) |
1186
|
Radeon Vega 3 (Athlon 300U) |
968
|
UHD 620 (Core i3) |
860
|
UHD 600 |
394
|
※スコアは当サイト計測値の平均 ※2はゲーミングPC向け
ちなみにAMDのCPUはインテルのCore iシリーズよりもグラフィックス性能が高いと言われていますが、これはビデオメモリー (VRAM)として割り当てるメインメモリーの容量が大きいためだと思われます。
実機で確認したところ、メインメモリーが4GBメモリーだとそのうちの512MBがビデオメモリーに割り当てられ、メインメモリーが8GBだと2GBが割り当てられていました。こによりグラフィックス処理のパフォーマンスは向上しますが、そのぶんシステムが使うメインメモリーの容量が減ってしまう点に注意してください。
Athlon 300U搭載機種ごとの違い
当サイトでは2019年9月時点までに、Athlon 300U搭載モデルを1機種のみ検証しています。検証台数が多くないため、とりあえずは暫定データとして参考にしてください。ほかの機種を検証する機会があれば、随時データを更新します。
A9-9420e搭載機のベンチマーク結果
機種名 | CINEBENCH R15 | CPU Mark | サイズ |
---|---|---|---|
IdeaPad S340 (14, AMD) | 360 | 4703 | 14インチ |
※製品名をクリックすると各機種のレビュー記事に移動します
なおベンチマーク結果はパーツ構成や本体の冷却性能、個体差、環境、タイミングなどさまざまな要因によって大きく変わります。必ずしもほかの機種 / 同一機種で同じ結果が出るわけではない点に注意してください。
実はかなりの高コスパ!
Athlon 300Uが使われているIdeaPad S340 (14, AMD)は税込3万8610円 (2019年9月時点)で、同価格帯の格安ノートPCのなかでは非常に高性能です。ノートPCのパフォーマンスはメモリー容量やストレージの種類などによっても大きく変わるのですが、CPU性能の点ではコスパが非常に高いと言えます。
Ryzen 3 3200Uとどちらを選ぶべきかについては、個人的にはAthlon 300Uのほうがいいのではないかと思います。スペック的にはRyzen 3 3200Uのほうが上ですけれどもその差はわずかで、実際のベンチマークテストではAthlon 300Uのほうが上回る結果となりました。検証機種が変わればその結果は逆転するかもしれませんが、それでも大きな差はないはず。性能があまり変わらないのであれば、安いAthlon 300Uのほうが有利というわけです。
強いて欠点を挙げるとするなら、Core iシリーズやRyzenシリーズよりも知名度が低い点でしょうか。いまはマイナーな存在ですが、コスパの高さが広く知られれば人気が出るかもしれません。その意味で今後要注目のCPUです。
*
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