2015年4月に、Atom系列のモバイル/小型パソコン向けCPU(SoC)として、Braswellシリーズがリリースされました。ラインナップはPentium N3700、Celeron N3150、Celeron N3050、Celeron N3000の4種類。2015年夏モデルとして発売されている低価格ノートパソコンでは、Braswellを採用するモデルも出てきています。今回はこのBraswellのCeleronシリーズについて、旧CPUとの違いやベンチマーク結果などを交えながら解説します。
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Atomシリーズと同じ「Airmont」アーキテクチャを採用
今回取り上げる「Celeron(セレロン)」は、インテル製CPUのなかでも省電力性能を重視した格安パソコン向けのシリーズです。価格が安い代わりに、基本性能は控えめという位置付けとなっています。
インテル製CPUの違い(性能の高い順) | ||||
シリーズ名 | 読み方 | 特徴 | 主な用途 | 搭載パソコンの価格帯 |
---|---|---|---|---|
Xeon | ジーオン | 先端技術をふんだんに使った超高性能CPU | 企業向けサーバー、CG制作 | 15万円~ |
Core i7 | コアアイセブン | かなり高性能な上級CPUで、処理速度が速い。2~8コア | 個人向け高性能(ハイエンド)パソコン、業務用パソコン | 8~50万円 |
Core i5 | コアアイファイブ | 中程度の性能と言われるが、処理速度は速い。2~4コア | 個人向けパソコンの標準モデル | 6~30万円 |
Core i3 | コアアイスリー | Core i5よりは劣るものの、十分実用的な性能。2コア | 廉価版モデル | 5~20万円 |
Core M | コアエム | 性能はCore i3よりやや低いものの、省電力性能が高い。2コア | 2-in-1パソコン、タブレット | 10~20万円 |
Pentium | ペンティアム | 性能をさらに落とした廉価版CPU。2コア | 低価格パソコン | 7~10万円 |
Celeron | セレロン | 計算性能よりも省電力性能を重視した格安なCPU。2~4コア | 格安パソコン、一体型PC | 3~15万円 |
Atom | アトム | 省電力性能に特化したCPU。2~4コア | タブレット、小型パソコン、スマートフォン、サーバー機器 | 1.5~10万円 |
上記の表を見ると、Celeronは「Atom」シリーズより格上のような印象を受けるでしょう。しかし今回取り上げるCeleron Nシリーズのアーキテクチャ(CPUの基本構造、「マイクロアーキテクチャ」とも呼ぶ)は「Airmont」で、マイクロソフト製タブレット「Surface 3」で採用されている「Atom x7-Z8700」と同じ。つまりCPUの構造的にはAtomシリーズと同等ということです。そのため、同じCeleronでもUシリーズやMシリーズなどと比べると、計算性能は低くなります。
ちなみに旧世代のCeleron Nシリーズ(Celeron N2940やCeleron N2840など)でもAtomシリーズと同じアーキテクチャでしたが、こちらでは「Silvermont」と呼ばれるアーキテクチャを採用していました。また同じアーキテクチャのCPUでも、シリーズによって異なる開発コードが付けられています。
最近の開発コードの種類 | ||
アーキテクチャ | 開発コード | 用途 |
---|---|---|
Silvermont | Bay Trail-D/Bay Trail-M | パソコン |
Bay Trail-T | タブレット | |
SoFIA | スマートフォン | |
Airmont | Braswell | パソコン |
Cherry Trail | タブレット | |
Morganfield | スマートフォン |
BraswellはBay Trailとグラフィックス性能が大きく異なる
次に、Braswell世代のCeleronシリーズ3種類のスペックを確認してみましょう。比較用に旧世代のCeleron N2940とCeleron N2840のスペックも含めています。
Braswell世代とBay Trail世代のCeleronシリーズの違い | |||||
CPU名 | Celeron N3150 | Celeron N3050 | Celeron N3000 | Celeron N2940 | Celeron N2840 |
---|---|---|---|---|---|
開発コード | Braswell | Bay Trail-M | |||
アーキテクチャ | Airmont | Silvermont | |||
プロセスルール | 14nm | 22nm | |||
コア数/スレッド数 | 4/4 | 2/2 | 2/2 | 4/4 | 2/2 |
動作周波数 | 1.6GHz | 1.6GHz | 1.04GHz | 1.83GHz | 2.16GHz |
バースト周波数 | 2.08GHz | 2.16GHz | 2.08GHz | 2.25GHz | 2.58GHz |
キャッシュメモリー | 2MB | 2MB | 1MB | ||
TDP | 6W | 6W | 4W | 7.5W | 7.5W |
グラフィックス | Intel HD Graphics(第8世代) | Intel HD Graphics(第7世代) | |||
グラフィックス動作周波数 | 320MHz | 320MHz | 320MHz | 313MHz | 311MHz |
グラフィックス最大動作周波数 | 640MHz | 600MHz | 600MHz | 854MHz | 792MHz |
実行ユニット数 | 12 | 4 | |||
DirectX | 11.1 | 11.0 | |||
OpenGL | 4.2 | 4.0 | |||
OpneCL | 1.2 | 1.2 |
上位CPUで4コア、中~下位CPUは2コアの構成は、BraswellでもBay Trailでも同じ。動作周波数は全体的にBraswellのほうが低めですが、そのぶんTDP(消費電力量の目安)が低く省電力性能に優れています。Braswellではキャッシュメモリーが2MBに統一された点も、大きな違いと言えるでしょう。
注目したいのは、グラフィックス性能に影響する「実行ユニット数」がBraswellではBay Trailの3倍にあたる「12」となっている点です。これにより、3D描画性能のパフォーマンスアップを期待できます。Bay Trail世代のCeleron N2840では3Dゲームを楽しめるほどの性能はありませんでしたが、Celeron N3050あたりならひょっとするとある程度遊べるようになるかもしれません。
ちなみに、BraswellのCPUコアは14nmのプロセスルールで製造されています。Bay Trailの22nmに比べて回路の線幅が狭くなり、そのぶんCPU内部の基本回路が縮小されました。その空いたスペースに実行ユニットを詰め込むことで、グラフィックス性能を向上させているのです。
Celeron N3050のベンチマーク結果は?
続いて、Braswell世代Celeronシリーズのベンチマーク結果をご覧いただきましょう。今回は、さまざまなCPUのベンチマーク結果を掲載している「PassMark CPU Benchmarks」のデータを参照しました。ただしCeleron N3050よりもCeleron N3000のほうが高いスコアが出ていましたので、筆者が実機で計測した結果もまとめています。PassMarkのスコアは複数のPCで計測した結果から導き出しているため、異常に低いまたは異常に高い結果が紛れていると、少しおかしな結果となる場合があります。
Celeron N3050のスコアは、1000をちょっと超える程度と考えられます。下位のCeleron N3000よりはやや上ですが、旧世代のCeleron N2840よりは低いといったところです。
Celeron N3150についてはクアッドコアだけあって、ほかのCPUよりも高めの結果が出ています。とは言え、やはりBay Trail世代のCeleron N2940よりは低めの結果となりました。
続いてCeleron N3050とCeleron N2840の「CINEBENCH」ベンチマーク結果を見てみましょう。このベンチマーク結果は筆者が検証したもので、すべての機種に当てはまるわけではない点をご了承ください。
「CINEBENCH」でも、CPUの処理性能はCeleron N2840のほうが高いという結果が出ています。ただしOpenGLのスコアはCeleron N3050のほうが高く、グラフィックス性能については向上していることがわかります。ただし、だからと言って3Dゲームがサクサク動くほどのパワーはありません。
現在の格安ノートパソコンでは、Celeron N2840とCeleron N3050がよく使われています。6~10万円以上のノートパソコンで使われているCPUと比べると、性能的にはかなり低めです。とは言っても、メールやネットの調べ物、ネット動画の視聴程度なら問題なく利用できるでしょう。
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