Celeron N4000およびCeleron N4100は、主に格安ノートPCで使われているCPU(SoC)です。2018年の春ごろから、このCPUを搭載した機種が発売され始めています。2018~2019年のあいだは、さらに多くの機種が発売されるでしょう。
Celeron N4000の実物 ※筆者撮影
Celeron N4000/4100は価格が安いだけあって、性能はそれほど高くありません。最新のCore i7やCore i5と比べると、パフォーマンスはかなり劣ります。
CPUの性能比較
CPU | CINEBENCH R15スコア |
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Core i7-8550U |
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Core i5-8250U |
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Celeron N4000 |
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※スコアは当サイト計測の平均値
しかしネットの調べ物やメール、動画視聴、ちょっとした文書作成には十分な性能です。多少使い方にコツが必要であるものの、3~4万円程度でノートPCを入手できるのは大きな魅力ではないでしょうか。
そこでこの記事ではCeleron N4000/4100搭載ノートPCのベンチマーク結果を紹介しながら、ほかのCPUと比べてどのくらいの性能なのかについて解説します。
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インテル製CPUの種類とCeleronの位置付け
「Celeron(セレロン)」とは、インテル製CPUのなかでも特に価格の安さを重視したCPUのブランド名です。価格が安いだけあって性能は控えめですが、消費電力が少ないというメリットもあります。
インテル製CPUの違い(性能の高い順) | ||
ブランド名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
Xeon(ジーオン) | 先端技術をふんだんに使った超高性能CPU | 企業向けサーバー、CG制作 |
Core i9(コアアイナイン) | 個人向けとしてはほぼ最高クラスの高性能なCPU。10~18コア | 高性能(ハイエンド)パソコン、ゲーム用パソコン |
Core i7(コアアイセブン) | かなり高性能な上級CPUで、処理速度が速い。2~8コア | 個人向け高性能(ハイエンド)パソコン、業務用パソコン |
Core i5(コアアイファイブ) | 中程度の性能と言われるが、処理速度は速い。2~4コア | 個人向けパソコンの標準モデル |
Core i3(コアアイスリー) | Core i5よりは劣るものの、十分実用的な性能。2コア | 廉価版モデル |
Core M(コアエム) | 性能はCore i3よりやや低いものの、省電力性能が高い。2コア | 2-in-1パソコン、タブレット |
Pentium(ペンティアム) | 性能をさらに落とした廉価版CPU。2コア | 低価格パソコン |
Celeron(セレロン) | 計算性能よりも省電力性能を重視した格安なCPU。2~4コア | 格安パソコン、一体型PC |
Atom(アトム) | 省電力性能に特化したCPU。2~4コア | タブレット、小型パソコン、スマートフォン、サーバー機器 |
Gemini Lakeとは?
Celeron N4000/4100は2017年12月に発表されたCPUで、このとき同時に発表された一連のCPUをインテルの開発コード名から「Gemini Lake(ジェミニレイク)世代」と呼びます。
Gemini Lake世代のCPUには、デスクトップPC向けとノートPC向けがそれぞれ3種類用意されています(2018年8月時点)。ノートPC向けのラインナップは、以下の3種類。このなかでもっともよく使われているのがCeleron N4000です。
Gemini Lake世代のCPU(ノートPC向け)の特徴
Celeron N4000 | Celeron N4100 | Pentium Silver N5000 | |
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コア数/スレッド数 | 2/2 | 4/4 | 4/4 |
周波数 | 1.1GHz | 1.1GHz | 1.1GHz |
最大動作周波数 | 2.60GHz | 2.40GHz | 2.70GHz |
内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics 600 | Intel UHD Graphics 605 |
ちなみに、ここ最近の格安PC向けCeleronの開発コードは以下のとおりです。覚える必要はありませんが、こういう呼び名があるということは知っておくといいでしょう。
参考:Celeron系の開発コード
開発コード | 読み方 | 発表時期 | 代表的なCPU |
---|---|---|---|
Gemini Lake | ジェミニレイク | 2017年12月 | Celeron N4100、Celeron N4000 |
Apollo Lake | アポロレイク | 2016年9月 | Celeron N3450、Celeron N3350 |
Braswell | ブラスウェル | 2014年4月 | Celeron N3160、Celeron N3060、Celeron N3050 |
Celeron N4000/N4100のベンチマーク結果
現在筆者はCeleron N4000搭載ノートPCを5台所有しています。ラインナップは以下のとおりです(すべて自腹購入)。
筆者が所有するCeleron N4000搭載機種
- ・Inspiron 15 3573
- ・Vostro 15 3572
- ・ideapad 330(14)
- ・ideapad 330(15)
- ・VivoBook E203MA
上記5機種のベンチマーク結果の平均値を算出し、ほかのCPUと比較しています。対象機種が増えたときには、データを更新する予定です。
なおベンチマーク結果はメモリーやストレージの構成、本体の冷却性能やチューニング、環境、タイミングなどによって大きく変わることがあります。そのためこの結果がすべてのCeleron N4000の性能を正しく表わしているわけではありません。すべて同じ手順で検証しているためある程度は参考になると思いますが、参考程度に考えてください。
CINEBENCH R15ベンチマーク結果
CINEBENCH R15は、CPUの計算性能を評価するベンチマークソフトです。3D CGのレンダリング速度から、シングルコア/マルチコア使用時のCPU性能を評価します。PCのレビュー記事ではよく使われますが、必ずしもCPUの総合的な計算性能を表わしているわけではない点に注意してください。
CINEBENCH R15
CPU性能比較(マルチコア)
名称 | 開発コード | コア数 | CINEBENCH R15スコア マルチコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
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Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
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Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
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Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
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Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N3160 | Braswell | 4 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
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Celeron N3150 | Braswell | 4 |
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Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
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Celeron N3060 | Braswell | 2 |
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Celeronの性能は最新のCore i5/i7には及ばないとは言え、ひとつ前の世代のCore iシリーズと比べるとなかなか健闘してます。特に4コアのCeleron N4100では、Core i3-7100Uに迫る結果が出ました。もっとも、マルチコア性能を計測するテストですので、コア数が多いほうが有利ではあるのですが。
2コアのCeleron N4000は、格安PC向けのCeleronシリーズのなかでは中程度の性能と言えます。
CPU性能比較(シングルコア)
名称 | 開発コード | コア数 | CINEBENCH R15スコア シングルコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
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Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
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Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
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Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
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Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
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Celeron N3060 | Braswell | 2 |
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Celeron N3160 | Braswell | 4 |
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Celeron N3150 | Braswell | 4 |
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シングルコア性能のテストでは、Gemini Lake世代のCPUがApollo Lake世代に比べて50%以上も性能が向上しています。格安PCのなかでは、上位の性能と言っていいでしょう。シンプルなソフトではシングルコアで動作するものも多いので、体感的に違いを感じられるかもしれません。
PassMark PerformanceTestベンチマーク結果
PassMark PerformanceTestはPCの性能を各パーツごとに評価するベンチマークソフトです。ベンチマーク結果は5種類のスコアで表わされるのですが、そのなかのひとつ「CPU Mark」で総合的なCPU性能を把握することができます。この結果は開発元であるPassMark SoftwareのCPU Benchmarksに送信され、ほかのCPUとスコアを比較可能です。
PassMark PerformanceTest 9.0 CPU Mark
CPU Markでは整数演算や浮動小数点演算のほかに、SSE(拡張命令)や物理演算、データ圧縮などのテストも含まれます。前述のCINEBENCH R15よりも、総合的なCPU性能を計測できると言えるでしょう。
CPU性能比較(CPU Mark)
名称 | 開発コード | コア数 | PassMark CPU Markスコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
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Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
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Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
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Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
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Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N3160 | Braswell | 4 |
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Celeron N3150 | Braswell | 4 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
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Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
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Celeron N3060 | Braswell | 2 |
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Celeron N4000はかなり下のほうにランクインしたものの、2コアのCeleron Nシリーズのなかではもっとも高い性能です。また4コアのCeleron N4100については中程度の位置ではあるものの、格安ノートPC向けとしてはかなり高性能です。
さらに前の世代のCPUについては手元にデータがないため、前述のPassMark CPU Marksのデータを参照しました。Celeron N4100は4年前のCore i3-4005Uを上回る性能であることがわかります。
旧世代のCPUとの性能比較(CPU Mark)
名称 | 開発コード | コア数 | PassMark CPU Markスコア |
---|---|---|---|
Core i7-5500U | Broadwell(2015) | 2 |
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Core i5-5200U | Broadwell(2015) | 2 |
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Core i3-5005U | Broadwell(2015) | 2 |
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Core i7-4500U | Haswell(2014) | 2 |
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Core i5-4200U | Haswell(2014) | 2 |
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Core i3-4005U | Haswell(2014) | 2 |
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Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
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Celeron N4000/N4100のグラフィックス性能
Celeron N4000/N4100ではグラフィックス機能として、CPU内蔵のIntel UHD Graphics 600が使われます。最近はCPU内蔵グラフィックス機能の性能が上がってきたとは言え、重量級のゲームを楽しむには全然性能が足りません。特に価格の安いCeleronはCore iシリーズよりもはるかにグラフィックス性能が低く、3Dゲームを楽しむにはとても厳しい性能です。
3Dグラフィックス性能の計測には、3DMarkのFire Strikeを利用しました。これはゲーミング性能を計測するためによく使われるテストで、Direct X11を使用したフルHD(1920×1080ドット)時のパフォーマンスを計測します。
3DMark Fire Strike
内蔵グラフィックス機能による3D性能の比較
名称 | グラフィックス機能 | 3DMark Fire Strikeスコア |
---|---|---|
Core i7-8550U | Intel UHD Graphics 620 |
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Core i5-8250U | Intel UHD Graphics 620 |
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Core i3-7100U | Intel HD Graphics 620 |
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Celeron 3865U | Intel HD Graphics 610 |
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Celeron N4100 | Intel UHD Graphics 600 |
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Celeron N4000 | Intel UHD Graphics 600 |
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Celeron N3450 | Intel HD Graphics 500 |
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Celeron N3350 | Intel HD Graphics 500 |
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Celeron N3160 | Intel HD Graphics 400 |
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Celeron N3060 | Intel HD Graphics 400 |
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Celeron N4000/4100では前世代のCeleron Nシリーズに比べて、グラフィックス性能が向上しています。しかし実際にゲーム系ベンチマークを試してみたところ、軽めのドラクエ10でも1280×720ドットの低画質でプレーは厳しいという評価でした。
ただしWindows 10向けに作られたUWPアプリや2D描画主体のゲームであれば、問題なくプレーできます。実際にマインクラフトのWindows 10版を試してみたところ、高画質ではややカクつきましたが、画質や描画範囲(チャンク)を変えたところスムーズにプレーできました。
UWPアプリの「Minecraft for Windows 10」
格安PC向けとしては高性能
Celeron N400/4100は確かにパフォーマンスは低いものの、3~4万円台で買える格安ノートPCのなかでは高性能です。複数のソフトを同時に使ってバリバリ作業するような使い方には向いていませんが、ネットの調べ物やメール、動画視聴、簡単な文書作成には十分。これまでの格安PCよりも快適に利用できるでしょう。
Gemini Lake世代搭載ノートPCのレビュー&解説記事
- Inspiron 15 3573(Celeron N4000)
- New Vostro 15 3572(Celeron N4000)
- m-Book C(Celeron N4100)
- LAVIE Direct NS(Celeron N4000)
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