12インチ版の「新しいMacBook」が発表されました。発売日は4月10日。Retinaディスプレイを搭載しているほか軽量薄型のボディで、早くも注目されています。個人的に気になるのは、CPUにBroadwell世代のCore Mシリーズを採用することで、どれほどの性能となったのかという点です。そこで公開された技術資料からCPUの型番を特定し、さらにベンチマーク結果を調べてみました。
標準構成時はCore M-5Y31/Core M-5Y51
AppleのMacBook紹介ページでは、CPU(プロセッサ)について以下のように記載されています。
「Core M」とは、Broadwell世代のタブレット/モバイルPC向けCPUシリーズのこと。従来(Haswell世代まで)のYシリーズに相当します。現在インテルからリリースされているCPUは4種類で、それぞれの性能については以下のとおり。なお以前は「Core M-5Y70」と「Core M-5Y10a」、「Core M-5Y10」というCPUもありましたが、この3種類についてはすでに販売終了となっています。
Core MシリーズのCPU(2015年3月時点) | ||||
Core M-5Y71 | Core M-5Y51 | Core M-5Y31 | Core M-5Y10c | |
コア数/スレッド数 | 2/4 | |||
動作周波数 | 1.2GHz | 1.1GHz | 0.9GHz | 0.8GHz |
最大動作周波数 | 2.9GHz | 2.6GHz | 2.4GHz | 2GHz |
キャッシュメモリ | 4MB | |||
内蔵グラフィックス | Intel HD Graphics 5300 | |||
TDP | 4.5W |
仕様を一見すると、新しいMacBookには「Core M-5Y71」と「Core M-5Y51」が搭載されているように見えるでしょう。しかしターボブースト時の最大動作周波数が合っていませんし、オプションの「1.3GHz」に相当するモデルも見当たりません。
ですが、それぞれのCPUをもう少し詳しく見てみると、なんとなく見えてきます。
Core MシリーズのCPU(2015年3月時点) | ||||
Core M-5Y71 | Core M-5Y51 | Core M-5Y31 | Core M-5Y10c | |
コア数/スレッド数 | 2/4 | |||
動作周波数 | 1.2GHz | 1.1GHz | 0.9GHz | 0.8GHz |
cTDPアップ時の動作周波数 | 1.4GHz | 1.3GHz | 1.1GHz | 1GHz |
最大動作周波数 | 2.9GHz | 2.6GHz | 2.4GHz | 2GHz |
cTDPアップとは、消費電力量を上げることでCPUのパフォーマンスを(一時的に)向上させる技術のこと。この周波数が1.1GHzの「Core M-5Y31」は、ターボブースト時の最大動作周波数が2.4GHzと、新しいMacBookの仕様にピッタリ合っています。つまり新しいMacBookはcTDPアップを有効にさせた状態で動作しているのでしょう。このことから、最小構成モデルには「Core M-5Y31」が搭載されていると思われます。
しかしながら、上位モデルでは動作周波数が1.2GHzとなっており、Core M-5Y51の1.3GHzと0.1GHzの差があります。CPUオプションはおそらく「Core M-5Y71」だと思われるのですが、やはり周波数が合っていません。インテルがApple向けにカスタムCPUを用意しているとは考えづらいので、ここではAppleが数字か仕様のどちらかを変えていると考えたほうがいいかもしれません。本来の上限は1.4GHzあるいは1.3GHzですが、消費電力を最大値まで上げずに性能をセーブしている可能性もあります。いずれにしても、近似値的なところで上位モデルには「Core M-5Y51」、CPUオプションでは「Core M-5Y71」が使われていると考えていいでしょう。
Core Mシリーズの性能をベンチマーク結果で比較
CPUの型番が判明したところで、それぞれのベンチマーク結果を参照してみましょう。参考までにMacBook Air(2013~2015)で使われているCPUの結果も含めています。
ベンチマーク結果を見ると、CPUオプションとして用意されている「Core M-5Y71」についてはMacBookAirよりもやや低いといった程度ですが、標準構成の「Core M-5Y31」と「Core M-5Y51」についてはかなりパワーダウンしていることがわかります。MacBook Airを使っていて「ちょっと遅いな」と感じている人にとって、CPUがダウングレードした新しいMacBookを使うのは厳しいと言えるのではないでしょうか。
ただし上記のベンチマークにおけるCore Mシリーズの結果は、cTDPアップが有効になっているスコアかどうかわかりません。cTDPアップによって動作周波数が上昇すれば、ひょっとすると快適に使える可能性はあります。しかしながら、cTDPアップが有効になったとしてもスコアが劇的に改善されることはないと思います。
新しいMacBookの値段は高いのか?それとも安いのか?
続いて、新しいMacBookについてそのほかのパーツ構成を見てみましょう。Apple公式サイトで販売が予定されているモデルのスペックは以下のとおりです。
新しいMacBookのスペック | ||
CPU | Core M-5Y31 | Core M-5Y51 |
---|---|---|
メモリー | 8GB | |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe) | 512GB SSD(PCIe) |
ディスプレイ | 12インチ、解像度2304×1440ドット、アスペクト比16:10 | |
インターフェース | USB-C×1 | |
サイズ/重量 | 幅280.5×奥行き196.5×高さ0.35~1.31mm/0.92kg | |
バッテリー駆動時間 | 最大9時間(Wi-Fi接続時) | |
税別価格 | 14万8800円 | 18万8800円 |
下位モデルの最小構成価格は14万8800円で、MacBook Air(11インチモデルは10万2800円から、13インチモデルは11万2800円から)よりも高めに設定されています。Retinaディスプレイ搭載でより軽量薄型されていることを考えれば、やむを得ないのかもしれません。しかしながら、やはり割高感があります。
さてここで、CPUにCore Mシリーズを搭載したWindows PCのスペックと価格を見てみましょう。
Core Mシリーズ搭載のWindows PC | ||||
製品名 | ZENBOOK UX305FA | Let’snote RZ4(CF-RZ4GDDJP) | dynabook R82(PR82PGQ-NHA) | LaVie U(LU550/TSS) |
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メーカー | ASUS | パナソニック | 東芝 | NEC |
CPU | Core M-5Y71 | Core M-5Y10c | Core M-5Y31 | Core M-5Y71 |
メモリー | 8GB | 4GB | ||
ストレージ | 128GB SSD | |||
ディスプレイ | 13.3型、1920×1080ドット | 10.1型、1920×1080ドット | 12.5型、1920×1080ドット | 11.6型、1920×1080ドット |
サイズ/重量 | 幅324×奥行き226×高さ12.3mm/1.2kg | 幅250×奥行き180.8×高さ19.5mm/745g | 幅309×奥行き199.9×高さ8.8mm/1.399kg | 幅301.4×奥行き216.7×高さ17.4~26.4mm/1.38kg |
バッテリー駆動時間 | 8.7時間 | 10時間 | 8時間 | |
税別価格 | 11万9800円 | 16万2800円(直販価格) | 店頭予想価格16万円台後半 | 実売13万円前後 |
ASUSの「UX305FA」 は比較的安いのですが、WindowsプラットフォームでもCore M搭載機はやや割高感があります。もっとも、国内メーカーの3機種については2-in-1タイプであるため、そのぶん価格が高めに設定されているといえるかもしれません。しかしメモリーやストレージの性能、液晶ディスプレイの解像度、そして持ち運びやすさの点では新しいMacBookのほうが上回っています。MacBook Airと比較すると値段が高いように思えますが、同スペックのWindowsマシンと比べるとかなりお得ではあるのです。
新しいMacBookは買いなのか?
今回はスペック面からMacBookを検証してみましたが、あくまでも性能面だけを考えるならそれほどおすすめはできません。ただRetinaディスプレイの実際の映像や改善されたキーボード、タッチパッドの使い勝手、そして実際の持ち運びやすさなどを加味すると、評価は変わってくる可能性はあります。
現時点で言えるのは、メールやネット、文書作成、あるいはブログの記事執筆には十分な性能であり、特に持ち運び用途にはピッタリということです。ビジネスマシンとしての性能よりも、機動性を求める人におすすめだと思います。