キヤノンから、個人向けインクジェット複合機「PIXUS」シリーズの新製品が発表されました。ラインナップはフラグシップモデル(上位機)の「PIXUS MG7730」とミドルレンジモデル(中位機)「PIXUS MG6930」、スタンダードモデル(標準機)の「MG5730」、エントリーモデル(下位機)の「PIXUS MG3630」の4種類です。今回はこの4機種がどう違うのか、スペックを交えながら解説します。
MG7730/MG6930/MG5730/MG3630のスペック
まずはそれぞれの主な仕様を確認してみましょう。各モデルのスペックは以下の表のとおりです。MG7730とMG6930は共通する部分が多く、MG5730とMG3630についても一部の仕様が共通しています。
キヤノン製インクジェット複合機2015年モデルの違い | ||||
商品名 | MG7730 | MG6930 | MG5730 | MG3630 |
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価格(税別) | 2万9800円 | 2万4800円 | 1万6800円 | 9800円 |
液晶サイズ | 3.5型 | 3.0型 | 2.5型 | – |
印刷解像度 | 9600×2400dpi | 4800×1200dpi | ||
ノズル | 合計6656 | 合計4096 | 合計1792 | |
インクシステム | 6色独立(染料ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、グレー、顔料ブラック) | 5色独立(染料ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、顔料ブラック) | 3色一体型(染料シアン/マゼンダ/イエロー)+顔料ブラック | |
インク滴 | 1pl | 2pl | ||
両面印刷 | 対応 | 対応(はがき非対応) | ||
給紙容量(A4用紙) | 下段最大125枚 | 前トレイ最大100枚 | ||
レーベルプリント | 対応 | 非対応 | ||
USB端子 | 1(PC接続用) | |||
有線LAN | 10BASE-T/100BASE-TX | 非搭載 | ||
無線LAN | IEEE802.11b/g/n | |||
メモリーカードスロット | SD/SDHC/MS Duo/MS PRO Duo | 非搭載 | ||
赤外線通信 | 非対応 | |||
Wi-Fi Direct | 対応 | |||
ADF | 非搭載 | |||
消費電力 | 15W | 13W | 12W | 16W |
幅(mm) | 435 | 455 | 449 | |
奥行き(mm) | 370 | 369 | 304 | |
高さ(mm) | 148 | 148 | 152 | |
重量 | 7.9kg | 6.3kg | 5.4kg | |
カラーバリエーション | ノーブルレッド、プレミアムゴールド、ホワイト、ブラック | ホワイト、ブラック | ホワイト、ブラック、ブラックシルバー | ホワイト、ブラック、レッド |
印刷速度(A4フチなしカラー写真印刷) | 44秒 | 1分15秒 | 1分30秒 | |
印刷速度(L判写真印刷) | 18秒 | 36秒 | 37秒 | |
印刷速度(A4モノクロ文書) | 15.0ipm(1枚あたり4秒) | 12.6ipm(1枚あたり4.7秒) | 9.9ipm(1枚あたり6秒) | |
印刷速度(A4カラー文書) | 10.0ipm(1枚あたり6秒) | 9.0ipm(1枚あたり6.6秒) | 5.7ipm(1枚あたり10.5秒) | |
印刷コスト(L判カラー) | 約15.8円(大容量インク)/約22.6円(標準) | 約15.1円(大容量インク)/約20円(標準) | 約18.6円(大容量インク)/約24.3円(標準) | |
印刷コスト(A4カラー文書) | 約8.9円(大容量インク)/約13.2円(標準) | 約8.3円(大容量インク)/約11.3円(標準) | 約12.4円(大容量インク)/約19円(標準) | |
対応インク | BCI-371(染料インク)/BCI-370(顔料インク)、BCI-371XL(染料インク)/BCI-370XL(顔料インク) | BCI-341(染料インク)/BCI-340(顔料インク)、BCI-341XL(染料インク)/BCI-340XL(顔料インク) | ||
インク価格(税別) | 6980円(大容量)/4980円(標準) ※6色マルチパック | 5980円(大容量)/4180円(標準) ※5色マルチパック | 4934円(大容量)/3410円(標準) ※カラーインクとブラックインクの合計金額 |
印刷品質が高いのはMG7730とMG6930
印刷性能に関してはMG7730とMG6930は同じで、そのあとは品質の高い順にMG5730、MG3630と続きます。上位モデルと中位モデルの印刷品質が高い理由はインクが6色構成である点と、インク滴が1pl(ピコリットル)である点。インク滴が小さいほど、精細でツブツブ感のない自然なプリントが可能となります。
高い解像度と1plの極小インク滴により、美しいプリントを実現しています ※出典元:キヤノン
またMG7730とMG6930は、印刷速度が速い点もポイントです。大量の写真や文書を印刷したときに、ほかのモデルと大きな差が出るでしょう。たとえば年賀状を印刷する場合、1枚あたりの印刷時間が10秒変わると100枚で16分もの違いが生じます。よりキレイにより早く印刷したいなら、上位モデルか中位モデルがおすすめです。
ランニングコストに優れているのは5色インク採用のMG5730
印刷コストを見てみると、5色インクを採用するMG5730がもっとも安くなっています。使うインクは同じ型番ですので、単純に1色ぶんコストが下がったと見ていいでしょう。6色のほうが写真の仕上がりがキレイですが、5色でも十分なクオリティーです。
4色インクのMG3630はインクの容量が少ないためか、印刷コストがやや高め。またカラーインクは3色一体タイプですのでどれか1色でもインクがなくなると丸ごと変える必要があり、コスト面の効率があまりよくありません。
MG3630のカラーインクは3色一体タイプで、どれか1色でもなくなると丸ごと変える必要があります ※出典元:キヤノン
MG5730とMG3630はSDカード非対応
標準モデルのMG5730と下位モデルのMG3630は、メモリーカードスロットを搭載していません。デジカメで撮影した写真を本体から印刷するダイレクトプリントには対応していないので、注意してください。ただ最近はスマートフォンで写真を取る人が多く、アプリ経由でプリントする機会が増えていることを考えれば、それほど大きな問題ではないかもしれません。
またPIXUSシリーズは全モデルでUSBメモリーからのダイレクトプリントに対応していない点にも注意してください。
MG7730とMG6930の違いは?
ここからは各モデルについて、スペック以外の面から比較してみましょう。上位モデルMG7730と中位モデルMG6930では、スペック上では液晶ディスプレイのサイズと有線LAN端子の有無、本体のカラーバリエーションが異なります。スペック以外の面では、MG7730はインテリジェントタッチシステムを採用している点が大きな違いです。
インテリジェントタッチシステムとは、つぎの操作をLEDボタンの光で伝える機能です。操作可能なボタンだけが光るのでどれを押せばいいのかわからないということがなく、また駆動部分が少ないので壊れにくいというメリットがあります。
インテルジェントタッチシステムを採用するMG7730は、操作パネルにボタン類がなくスッキリしています
MG6930は物理的にプッシュするボタンを使って操作します
タッチパネルかプッシュパネルかは大きな違いではないのですが、見た目はかなり違います。スッキリとスマートなデザインがお好みなら、上位モデルのMG7730を選ぶといいでしょう。デザイン面にこだわりがなく、有線LANが必要なければMG6930を選ぶのもアリです。
MG6930とMG5730の違いは?
MG6930とMG5730では印刷性能やインターフェースなどがだいぶ異なりますが、それ以外の違いとしてNFCポートの有無が挙げられます。NFCポートを搭載するMG6930(MG7730も搭載)では、専用アプリ「Canon PRINT Inkjet」とNFC対応のAndroid端末を使うことで、タッチだけで写真をプリントしたり文書をスキャンすることが可能です。
NFC対応のスマートフォンやタブレットを操作パネル右側のNFCポートかざすだけで、写真や文書をプリント可能です ※出典元:キヤノン
また印刷開始時に閉じていた排紙トレイが自動的に開く「スマートトレイ」に対応している点も、MG6930のポイントです(MG7730も対応)。 そのほか細かなところでは、MG5730はレーベルプリントやはがきの自動両面印刷に対応していない点に注意してください。
MG5730とMG3630の違いは?
MG5730とMG3630とでは、本体デザインや印刷性能が異なることがスペック表からわかります。それ以外の部分では、MG3630は消費電力を押さえる「ECO設定」に対応していない点が挙げられます。
常に両面印刷を行なうことで紙資源を節約できるほか、自動電源オフまでの時間を設定できる「ECO設定」 ※出典元:キヤノン
ECO設定は便利な機能ではあるものの、それだけで製品の購入を決めるほどではないでしょう。MG5730かMG3630で検討するなら、コスト面と印刷品質面から判断することをおすすめします。
オススメはMG7730かMG6930
今回の4機種のなかでオススメモデルを挙げるとすれば、やはり機能と印刷品質面で充実しているMG7730かMG6930でしょうか。個人的にはMG7730のほうがデザイン的にスッキリしていますので、購入するなら上位モデルを選びたいところです。
またMG3630は時間がしばらくたって、値下がりすればかなりおすすめです。個人的には4000円前後まで下がるのではないかと予想していますので、その頃になれば検証用に購入してもいいかなと考えています。
ということで、今回はキヤノンのPIXUSシリーズ最新モデルについてまとめました。購入する際は、用途とコストを検討した上で最適なモデルを選んでください。