AMDのRyzen 3 4300Uは、2020年1月に発表されたノートPC向けのCPU (APU)です。2020年前半以降に発売されたスタンダードノートPC / モバイルノートPC、小型デスクトップPCなどで使われています。
Ryzen 3 4300Uのスペック
世代 | 第3世代Ryzenモバイル |
---|---|
開発コード | Renoir (Zen2) |
コア数 / スレッド数 | 4 / 4 |
動作周波数 | 2.7GHz |
最大動作周波数 | 3.7GHz |
TDP | 15W |
内蔵グラフィックス | AMD Radeon Graphics |
CPUとしての総合性能はインテル第10世代のCore i5相当です。ただし処理内容によっては、第10世代Core i7を上回る場合もあります。
Ryzen 3 4300Uのベンチマークスコア概要
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
15181
|
Ryzen 5 4500U |
12892
|
Core i7-1065G7 |
12016
|
Core i7-10510U |
10257
|
Core i5-1035G1 |
9667
|
Core i5-10210U |
9584
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
Core i3-10110U |
5553
|
Celeron N4020 |
1658
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの計算性能は第10世代Core i5相当であるのに加え、内蔵グラフィックスもなかなか高性能です。PCとしての総合力はCore i5/Core i7に相当すると言っていいでしょう。。
Ryzen 3 4300Uの用途
ゲーム | |
---|---|
動画編集 | |
RAW現像 | |
3D制作 | |
デザイン | |
イラスト | |
DTM | |
ビジネス |
※ノートPC向けCPUとしての評価
この記事ではこれからノートPCを購入しようとしている方のために、Ryzen 3 4300Uの性能について紹介します。
※グラフィックス機能内蔵のAMD製プロセッサーは本来「APU」と呼ばれますが、この記事では初心者の混乱を避けるために「CPU」と表記します
Ryzen 3 4300U概要
Ryzen 3はAMD Ryzenシリーズのなかで下位クラスに位置づけられるCPUです。CPUの計算性能よりも価格の安さを重視されています。インテル製CPUで言うところの、Core i3と同じ立場と考えていいでしょう。
CPUの種類
AMD | インテル | 概要 |
---|---|---|
Athlon | Celeron / Pentium | とにかく価格の安さを重視 |
Ryzen 3 | Core i3 | 性能よりも価格の安さを重視 |
Ryzen 5 | Core i5 | 性能と価格のバランスを重視 |
Ryzen 7 | Core i7 | 性能を重視 |
Ryzen 9 | Core i9 | とにかく性能をとことん重視 |
従来のRyzenシリーズはインテルのCore iプロセッサーよりも性能は劣るものの価格が安く、コスパに優れるCPUと認識されていました。しかし2020年にリリースされた第3世代Ryzenモバイル4000シリーズでは性能が飛躍的に向上し、ベンチマークテストでは同ランクのCore iシリーズを大きく引き離しています。
Ryzen 3 4300UとCore i3-10110Uの違い
Ryzen 3 4300U | Core i3-10110U | |
---|---|---|
発表日 | 2020年1月 | 2019年8月 |
製造プロセス | 7nm | 14nm |
コア数 / スレッド数 | 4 / 4 | 2 / 4 |
動作周波数 | 2.70GHz | 2.10GHz |
最大動作周波数 | 3.70GHz | 4.10GHz |
キャッシュメモリー | 4MB | 4MB |
TDP | 15W | 15W |
内蔵グラフィックス | AMD Radeon Graphics | Intel UHD Graphics |
Ryzen 3 4300Uのベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Ryzen 3 4300U本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
スタンダードノートPC / モバイルノートPC向けCPUのなかで、Ryzen 3 4300Uは中位クラスに位置します。従来のRyzen 3 / Ryzen 5から性能が大きく向上し、インテルCore i5シリーズとほぼ同程度です。これまで普段使いやビジネスにはCore i5が最適と言われてきたことを考えると、これからはRyzen 3でも普段使いやビジネスには十分と言っていいでしょう。
CPUとの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
15181
|
Core i7-10710U |
13685
|
Ryzen 5 4500U |
12892
|
Core i7-1065G7 |
12016
|
Core i5-1035G4 |
10844
|
Core i7-10510U |
10257
|
Core i5-1035G1 |
9667
|
Core i5-10210U |
9584
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
Ryzen 5 3500U |
8398
|
Ryzen 3 3300U |
6681
|
Core i3-10110U |
5553
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Athlon Silver 3050U |
3851
|
Celeron N4120 |
2771
|
Celeron N4020 |
1658
|
※スコアは当サイト計測値の平均
高度な処理で求められるマルチコア性能については、Core i7と同クラスです。メモリーとストレージの容量さえ十分であれば、これまでCore i7でないと快適に使えなかったソフトでもRyzen 3 4300U搭載機で利用できるでしょう。
CPUとの性能比較(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
2804
|
Ryzen 5 4500U |
2274
|
Core i7-10710U |
2214
|
Core i7-1065G7 |
1625
|
Ryzen 3 4300U |
1581
|
Core i7-10510U |
1486
|
Core i5-1035G4 |
1480
|
Core i5-1035G1 |
1456
|
Core i5-10210U |
1435
|
Ryzen 5 3500U |
1397
|
Ryzen 3 3300U |
1020
|
Core i3-10110U |
918
|
Ryzen 3 3200U |
643
|
Athlon Silver 3050U |
624
|
Celeron N4120 |
435
|
Celeron N4020 |
328
|
※スコアは当サイト計測値の平均
過去4年間にリリースされたノートPC向けCPUと比較すると、Ryzen 3 4300Uは2018年のCore i7-8565Uをわずかに下回る程度です。それ以前のCore i7については、完全に上回っていると考えていいでしょう。
旧世代CPUとの性能比較 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-8565U |
9913
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
Core i7-8550U |
8985
|
Core i5-8265U |
8673
|
Core i5-8250U |
8385
|
Core i7-7500U |
5708
|
Core i5-7300U |
5312
|
※スコアは当サイト計測値の平均
ゲーミングノートPC向けCPUとの比較
ゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCで使われる高性能なHシリーズと比較すると、Ryzen 3 4300Uの性能はかなり劣ります。高いCPU性能が求められるPCゲームや動画編集には向いていません。
CPUの性能比較 (総合性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 4800H |
4323
|
Ryzen 9 4900HS |
4266
|
Core i9-10885H |
3504
|
Core i7-10875H |
3293
|
Core i7-10750H |
2861
|
Core i7-9750H |
2684
|
Core i7-8750H |
2626
|
Core i5-10300H |
2241
|
Core i5-9300H |
1922
|
Ryzen 3 4300U |
1581
|
※スコアは当サイト計測値の平均
デスクトップPC向けCPUとの比較
ゲーミングノートPC向けよりもさらに高性能なデスクトップPC向けCPUと比較すると、Ryzen 3 4300Uは前世代のCore i3-9100とほぼ同程度です。上位のCore i5やCore i7よりはだいぶ劣ります。
デスクトップPC向けCPUとの性能比較(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i7-10700 |
4177
|
Core i7-9700K |
3397
|
Core i7-9700 |
3190
|
Core i5-10400 |
3170
|
Core i5-9400 |
2357
|
Ryzen 5 3400G |
1884
|
Core i3-9100 |
1592
|
Ryzen 3 4300U |
1581
|
Ryzen 3 3200G |
1462
|
Celeron G4930 |
535
|
※スコアは当サイト計測値の平均
過去5年間にリリースされたデスクトップPC向けCPUと比較しても、Ryzen 3 4300Uはパフォーマンス面で劣ります。しかし2015年リリースのCore i7-6700や2016年のCore i7-7700にはだいぶ近づきました。PCの状態によっては、同程度のパフォーマンスを発揮できるかもしれません。
旧世代のデスクトップPC向けCPUとの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-8700 |
15673
|
Core i7-7700 |
10676
|
Core i7-6700 |
10517
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 3 4300Uのグラフィックス性能
ノートPCに外付けGPUが搭載されていない限り、ウィンドウズのグラフィックス処理にはRyzen 3 4300U内蔵のRadeon Graphicsが使われます。CPU内蔵タイプとしてはかなり優秀で、インテルCore iシリーズ内蔵のUHD Graphicsより高性能です。
ただしRyzenモバイルシリーズはメモリーがシングルチャネルで動作しているか、それともデュアルチャネルで動作しているかでグラフィックス性能が大きく変わります。当サイトの検証結果では、動作モードの違いによって1.4倍の差が出ました。
なお容量の影響は小さく、たとえば16GB×1のシングルチャネル構成よりも4GB×2のデュアルチャネル構成のほうがパフォーマンスが向上する場合があります。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
Radeon (Ryzen 7 Dual) |
3449
|
MX250 |
3400
|
Iris Plus(Core i7) |
2880
|
Radeon (Ryzen 5 Dual) |
2652
|
Radeon (Ryzen 7 Single) |
2364
|
Radeon (Ryzen 3 Dual) |
2324
|
Radeon (Ryzen 5 Single) |
2302
|
Iris Plus(Core i5) |
2236
|
Radeon (Ryzen 3 Single) |
1640
|
UHD (Core i7) |
1335
|
UHD (Core i5) |
1273
|
UHD (Core i3) |
859
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 3 4300Uのゲーム性能
Ryzen 3 4300Uは内蔵グラフィックス性能がそこそこ高いだけあって、軽めのゲームであれば画質を調整することで快適に楽します。やや重い中量級タイトルでは、画質と解像度をグッと下げてなんとかというレベル。ゲームによってはプレーは厳しいかもしれません。人気のFPSやTPSをがっつり遊ぶには、ちょっと厳しい性能です。
※以下はHP ENVY x360 13-ay0000の結果で、テストはフルHDで実施
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | ※計測不能 |
標準品質 | 1274 / 動作困難 |
軽量品質 | 1581 / 動作困難 |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 1988 / 12.8 FPS |
高品質 | 2748 / 18.3 FPS |
標準品質 | 3748 / 25.3 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 6802 / 快適 |
標準品質 | 8904 / とても快適 |
低品質 | 10045 / すごく快適 |
PSO2ベンチ (軽い / DX9)
簡易描画設定 | スコア |
6 (最高) | 1,291 |
3 | 6,638 |
1 (最低) | 36,695 |
※スコア5,000以上が快適に遊べる目安
リーグ・オブ・レジェンド (LoL) (超軽い / DX9)
モード | 平均FPS / 最低FPS |
サモナーズリフト (最高画質) | 99.8 FPS / 68 FPS |
TFT (最高画質) | 96.5 FPS / 65 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
Ryzen 3 4300U搭載機種ごとの違い
当サイトでは2020年9月までに、Ryzen 3 4300U搭載モデルを3機種検証しています。検証数は多くありませんが、ある程度は参考になるはずです。今後検証機種が増えれば、データを更新します。
Ryzen 3 4300U搭載機別のベンチマーク結果
機種名 | CINEBENCH R20 | CPU Mark | Fire Strike Graphics score |
---|---|---|---|
HP ENVY x360 13-ay0000 | 1575 | 9155 | 2344 |
ThinkPad E14 Gen 2 (AMD) | 1544 | 9152 | 2330 |
IdeaPad Flex 550 | 1623 | 8448 | 1640 |
※製品名クリックでレビューをご覧いただけます
これからはCore i5の代わりにRyzen 3
これまで普段使いやビジネス用のノートPCの理想のスペックは、Core i5+8GBメモリー+256GB SSDとされてきました。しかしRyzen 3 4300Uならより安い値段で、同クラスのパフォーマンスを実現しています。グラフィックス性能を含めた総合性能であれば、Core i7と同等です。手頃でしっかり使えるノートPCを選ぶなら、まずはRyzen 3 4300U搭載モデルから検討するといいでしょう。
ただし前述のとおり、Ryzenモバイルシリーズはメモリーがシングルチャネルだと本来の性能を発揮できません。ノートPCを選ぶ際はできればメモリー容量が8GB以上でデュアルチャネルのモデルを選んでください 。8 / 16GBでもシングルチャネルの場合があるので注意が必要です。
4GBしかない場合は、本体内部のメモリースロットがいくつあるのか確認しましょう。2ポートあればメモリーを増設 / 交換することでデュアルチャネル化できます。1ポートのみでもオンボード (マザーボードに直付け)であればデュアル化が可能かもしれません。
オンボードでメモリースロットなしの4GBモデルはデュアル化できない場合があるので、その点を十分理解した上での購入をおすすめします。8GBオンボードの場合はデュアルチャネルで動作することが多いので、念のためスペックを確認してください。
メモリー構成による見分け方
メモリースロット×2 | デュアル化可能 |
---|---|
メモリースロット×1 | オンボードメモリーがあればデュアル化の可能性あり。ないならシングル動作 |
メモリースロットなし | 8GB以上ならデュアル動作の可能性あり。4GBならシングル動作 |
*
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