AMDのRyzen 5 3500Uは、2019年1月に発表されたノートPC向けのCPU (※)です。主に2019年春以降に発売された薄型のスタンダードノートPCやモバイルノートPCなどで使われています。
※グラフィックス機能が内蔵されたAMD製プロセッサーは本来「APU」と呼ばれますが、この記事ではわかりやすさ優先で「CPU」と表記しています
Ryzen 5 3500Uのスペック
世代 | Ryzen Mobile APU 第2世代 |
---|---|
開発コード | Picasso |
コア数 / スレッド数 | 4 / 8 |
動作周波数 | 2.1GHz |
最大動作周波数 | 3.7GHz |
TDP | 15W |
内蔵グラフィックス | Radeon Vega 8 Graphics |
性能はインテルのCore i5相当、あるいは一部の機能においてはCore i5よりも上と公式にアナウンスされました。発表当時は確かにそうであったものの、すでにインテルから第10世代のCore i5がリリースされている現在においてはパフォーマンス面での価値は以前よりも下がっています。
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i5-1035G4 |
10844
|
Core i5-10210U |
9815
|
Core i5-1035G1 |
9164
|
Core i5-8265U |
8593
|
Core i5-8250U |
8385
|
Ryzen 5 3500U |
8373
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 5 3500Uの用途
ゲーム | |
---|---|
動画編集 | |
RAW現像 | |
3D制作 | |
デザイン | |
イラスト | |
DTM | |
ビジネス |
※ノートPC向けCPUとしての評価
この記事ではこれからノートPCを購入しようとしている方のために、Ryzen 5 3500Uの性能について紹介します。
https://little-beans.net/tokushu/corei5-laptop/
Ryzen 5 3500U概要
AMDのRyzen Uシリーズは、一般用途向けのスタンダードノートPCや軽量薄型のモバイルノートPCで利用されています。ラインナップはRyzen 3、Ryzen 5、Ryzen 7の3種類。それぞれの位置付けはインテルのCore iプロセッサーと同様と考えていいでしょう。
Ryzen / Core iプロセッサーの種類
AMD | インテル | |
---|---|---|
価格重視 | Ryzen 3 | Core i3 |
価格と性能のバランス重視 | Ryzen 5 | Core i5 |
やや性能重視 | Ryzen 7 | Core i7 |
とにかく性能重視 | - | Core i9 |
Ryzen 5 3500Uは2019年1月にリリースされ、同年春移行のノートPCで使われています。搭載機種はCore i5よりも少ないものの、Core i5搭載機種に比べて価格が安いこともあってコスパの高さを求める人に注目されています。
Ryzen 5 / Core i5搭載機種の価格差
Ryzen 5 | Core i5 | |
---|---|---|
IdeaPad S540 | 5万3922円 | 5万7552円 |
ENVY x360 15 | 8万3050円 | 12万4080円 |
※2019年11月26日時点、価格は税込
実際には機能や品質、付属品などによって価格は変わりますが、同型であれば概ねRyzen 5搭載機種のほうがCore i5搭載機種よりも価格が安い傾向にあります。
Ryzen 5 3500Uのベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Ryzen 5 3500U本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
一般用途向けのスタンダードノートPCやモバイルノートPC向けのCPUで比較すると、Ryzen 5 3500Uは平均よりもやや上あたりの性能です。CPUを性能別に上位 / 中位 / 下位に分類すると、上位の下といったところ。一般的には高性能と言っていいでしょう。
CPUの性能比較 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-10710U |
13685
|
Core i7-1065G7 |
11872
|
Core i5-1035G4 |
10844
|
Core i7-10510U |
10412
|
Core i5-10210U |
9815
|
Core i7-8565U |
9814
|
Core i5-1035G1 |
9164
|
Core i7-8550U |
9009
|
Core i5-8265U |
8593
|
Core i5-8250U |
8385
|
Ryzen 5 3500U |
8373
|
Core i3-10110U |
5550
|
Core i3-8145U |
5549
|
Core i3-8130U |
5534
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Celeron N4100 |
2569
|
Celeron 4205U |
2021
|
Celeron N4000 |
1550
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
負荷の高い高度な処理に影響するマルチコア性能については第8世代のCore i5を上回り、第8世代のCore i7に近い結果が出ています。一部PCメーカーが「Ryzen 5はCore i7相当」と謳っているのは、このような背景があるためです。
CPUの性能比較 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i7-10710U |
2214
|
Core i7-1065G7 |
1603
|
Core i7-10510U |
1506
|
Core i5-1035G4 |
1480
|
Core i5-10210U |
1408
|
Core i7-8565U |
1383
|
Ryzen 5 3500U |
1381
|
Core i5-1035G1 |
1370
|
Core i5-8250U |
1272
|
Core i5-8265U |
1217
|
Core i3-10110U |
906
|
Core i3-8145U |
769
|
Ryzen 3 3200U |
643
|
Celeron N4000 |
301
|
Celeron 4205U |
293
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 5 3500Uのパフォーマンスは、日常的な作業やビジネスには十分です。プロ向けの高度なソフトを使った作業や高度なデータ処理には向きませんが、ちょっとした画像や動画の加工にも問題なく利用できます。
ゲーミングノートPC向けCPUとの比較
PCゲームや動画編集、画像加工などの重い処理では、CPUのマルチコア性能が強く影響します。ゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCで使われるHシリーズと比較すると、Ryzen 5 3500Uは低めの結果となりました。一般的な作業には問題ありませんが、高いパフォーマンスが要求される処理には向いていません。
CPUの性能比較 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i9-9980HK |
3558
|
Core i9-9880H |
3402
|
Core i7-9750H |
2695
|
Core i7-8750H |
2625
|
Core i5-9300H |
1922
|
Ryzen 5 3500U |
1381
|
※スコアは当サイト計測値の平均
デスクトップPC向けCPUとの比較
ノートPCよりも性能の高いデスクトップPC向けCPUと比較すると、高負荷な処理で要求されるマルチコア性能ではRyzen 5 3500UはCore i3もやや下といったところです。性能は高くはありませんが、それでもデスクトップPC向けのPentiumやCeleronよりは優れています。
CPUの性能比較(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i9-9900K |
4244
|
Core i7-9700K |
3397
|
Core i7-9700 |
3190
|
Core i7-8700 |
3026
|
Core i5-9500 |
2370
|
Core i5-9400 |
2312
|
Core i3-9100 |
1592
|
Ryzen 5 3500U |
1381
|
Pentium G5400 |
390
|
Celeron G4930 |
238
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 5 3500Uのグラフィックス性能
グラフィックス性能のテストでは、優れた結果が出ています。外付けGPUには劣るものの第8世代のUHD Graphics 620や第10世代のUHD Graphicsを大きく上回り、インテルのCPU内蔵グラフィックスとしてはワンランク上のIris Plus Graphicsと同等レベルの結果が出ました。
ただし、重いゲームを快適にプレーできるほどではありません。ドラクエ10やリーグ・オブ・レジェンドなどごく軽めのゲームをフルHDでなんとか、というレベルです。しかしGPUを利用するクリエイター向けソフトでは、UHD / UHD 620よりも高い効果を見込めるでしょう。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
GTX 1050 |
5912
|
MX250 |
3400
|
MX150 |
3386
|
Iris Plus(Core i7) |
2846
|
MX230 |
2443
|
Iris Plus(Core i5) |
2236
|
Radeon Vega 8 (Ryzen 5) |
2193
|
MX130 |
2076
|
UHD (Ice Lake Core i5) |
1396
|
UHD (Comet Lake Core i7) |
1335
|
UHD 620 (Core i7) |
1265
|
UHD (Comet Lake Core i5) |
1273
|
UHD 620 (Core i5) |
1186
|
※スコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 5 3500U搭載機種ごとの違い
当サイトでは2019年11月までに、Ryzen 5 3500U搭載モデルを4機種検証しています。検証数が少ないためデータの精度は高くありませんが、とりあえずの暫定データとして考えてください。今後検証機種が増えれば、データを更新します。
Ryzen 5 3500U搭載機別のベンチマーク結果
機種名 | CINEBENCH R20 | CPU Mark | サイズ |
---|---|---|---|
ThinkPad E595 | - | 8308 | 15インチ |
IdeaPad S540 (14,AMD) | 1430 | 8369 | 14インチ |
HP ENVY x360 15-ds0000 | 1365 | 8906 | 15インチ |
HP ENVY x360 13 | 1159 | 8315 | 13インチ |
m-Book X400B | 1573 | 8335 | 13インチ |
mouse X5-B | 1378 | 8007 | 15インチ |
Ryzen 5 3500U搭載おすすめ機種
IdeaPad S340 (14, AMD)
14インチのフルHDディスプレイを搭載した機種。Ryzen 5搭載モデルとしては最安ですが、液晶ディスプレイがTNパネルでやや青みがかっています。普通に利用できますが、映像品質よりも価格の安さを優先したい人向けです。
IdeaPad S540 (14, AMD)
スリムで高品質なアルミ製ボディと、映像の美しいIPSパネルを搭載している点が特徴。サインイン時に便利な指紋センサーも用意されています。キーボードのタイプ感が軽い点が若干気になりますが、総合的には高コスパです。
HP 14s-dk0000
税込5万円台
- CPU:Ryzen 5 3500U
- メモリー:8GB
- ストレージ:256GB SSD
- 解像度:フルHD
- 重量:1.5kg
- バッテリー:8時間30分
発色に優れるIPSパネルと光沢ありのグレア仕上げによる鮮やかな映像が特徴。有線LAN端子に対応している点もポイントです。ホワイトのボディは上品な仕上がりで、安っぽさはあまり感じられません。キーボードの使い心地も◯。
HP 15-db0000
DVDの再生と書き込みが可能な光学ドライブを搭載。数値入力に便利なテンキーも付いた、もっともスタンダードなタイプです。液晶ディスプレイは高精細なフルHDですが、映像は若干青みがかっています。普通のノートPCが欲しい人におすすめ。
HP ENVY x360 13-ar0000
税込8万円台
- CPU:Ryzen 5 3500U
- メモリー:8GB
- ストレージ:256GB SSD
- 解像度:フルHD
- 重量:1.28kg
- バッテリー:14時間30分
13インチのモバイル2-in-1としては破格の値段。値段は中級クラスでも、本体の仕上がりの良さは高級クラス並みです。さらに標準で指紋センサーを搭載しているほか、別売りのアクティブペンを使えば手書き入力も行なえます。コスパの高さはピカイチ!
HP ENVY x360 15-ds0000
税込8万円台
- CPU:Ryzen 5 3500U
- メモリー:8GB
- ストレージ:512GB SSD
- 解像度:フルHD
- 重量:1.98kg
- バッテリー:13時間
15.6インチの液晶ディスプレイを搭載した大型2-in-1。同クラス製品のなかでは値段が安いにも関わらず、本体はアルミ製で質感は高め。スリムかつスタイリッシュなデザインです。標準で512GBの大容量SSDを搭載している上に、プラス3300円で16GBメモリーへのアップグレーが可能!
価格の安さで考えるならアリ
前述のとおり現在ではすでにインテルの第10世代Core i5が出回っているため、パフォーマンス的にはひと世代前の感は拭えません。しかし現在販売されているRyzen 5 3500U搭載機種は概ねインテルのCore i5搭載機種よりも安いので、価格の安さを優先するならありでしょう。普段の作業にはしっかり使えることを考えれば、コスパの高いCPUです。
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