AMDのRyzen 7 4700Uは、2020年1月に発表されたノートPC向けのCPU (APU)です。2020年前半以降に発売されたスタンダードノートPC / モバイルノートPC、小型デスクトップPCなどで使われています。
Ryzen 7 4700Uのスペック
世代 | 第3世代Ryzenモバイル |
---|---|
開発コード | Renoir (Zen2) |
コア数 / スレッド数 | 8 / 8 |
動作周波数 | 2.0GHz |
最大動作周波数 | 4.1GHz |
TDP | 15W |
内蔵グラフィックス | AMD Radeon Graphics |
CPUとしての総合性能はいまのところ最高クラスです。ゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCにはやや及ばないものの、薄型ノートPCやモバイルノートPCとしては非常に高いパフォーマンスを期待できます。
Ryzen 7 4700Uのベンチマークスコア概要
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
15264
|
Core i7-10710U |
13685
|
Ryzen 5 4500U |
12892
|
Core i7-1065G7 |
12016
|
Core i7-10510U |
10257
|
Core i5-1035G1 |
9667
|
Core i5-10210U |
9584
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能も、CPU内蔵タイプとしては非常に強力。ゲームやクリエイター向けソフトでの効果を期待できるでしょう。
Ryzen 7 4700Uの用途
ゲーム | |
---|---|
動画編集 | |
RAW現像 | |
3D制作 | |
デザイン | |
イラスト | |
DTM | |
ビジネス |
※ノートPC向けCPUとしての評価
この記事ではこれからノートPCを購入しようとしている方のために、Ryzen 7 4700Uの性能について紹介します。
※グラフィックス機能内蔵のAMD製プロセッサーは本来「APU」と呼ばれますが、この記事では初心者の混乱を避けるために「CPU」と表記します
Ryzen 7 4700U概要
Ryzen 7はAMD Ryzenシリーズのなかで上位クラスに位置づけられるCPUです。ほかのクラスに比べて価格よりも性能を重視しており、高いパフォーマンスを実現しています。さらにこの上のRyzen 9は超上級者向けの特殊なクラスですので、実質的にはRyzen 7が最上位クラスと考えていいでしょう。
CPUの種類
AMD | インテル | 概要 |
---|---|---|
Athlon | Celeron / Pentium | とにかく価格の安さを重視 |
Ryzen 3 | Core i3 | 性能よりも価格の安さを重視 |
Ryzen 5 | Core i5 | 性能と価格のバランスを重視 |
Ryzen 7 | Core i7 | 性能を重視 |
Ryzen 9 | Core i9 | とにかく性能をとことん重視 |
Ryzen 3 / 5 / 7ではCPUのコア数や動作周波数などが異なります。ノートPCでよく使われるRyzen 7 4700Uは8コア / 8スレッドです。第10世代インテルCore i7はCore i7-10710Uが6コアでそのほかが4コアですから、コア数ではRyzenシリーズが上回っています。
よく使われる第3世代Ryzenモバイルのスペック
Ryzen 7 4700U | Ryzen 5 4500U | Ryzen 3 4300U |
---|---|---|
8コア / 8スレッド | 6コア / 6スレッド | 4コア / 4スレッド |
最大4.1GHz | 最大4.0GHz | 最大3.7GHz |
TDP 15W | ||
AMD Radeon Graphics |
なおRyzen 7 4700Uはよく使われるというだけで、ほかにもっと高性能なCPUが存在します。一般ノートPC向けはRyzen 7 4800で、同じ8コアではあるものの16スレッドで動作する点が特徴。Ryzen 7 PRO 4750Uはビジネス向けの機能を内蔵しており、Ryzen 7 4800HはゲーミングノートPC向けのより高性能なCPUです。
チェックしておきたいそのほかのRyzen 7
Ryzen 7 4800U | Ryzen 7 PRO 4750U | Ryzen 7 4800H |
---|---|---|
8コア / 16スレッド | 8コア / 16スレッド | 8コア / 16スレッド |
最大4.2GHz | 最大4.1GHz | 最大4.2GHz |
TDP 15W | TDP 45W | |
AMD Radeon Graphics |
これらのCPUを搭載した機種は高性能ではあるものの、Ryzen 7 4700Uほど多くはありません。ノートPCとして普通に使うぶんにはRyzen 7 4700Uを選べば問題ないでしょう。特定の用途で利用する場合に意識してください。
Ryzen 7 4700Uのベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Ryzen 7 4700U本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
スタンダードノートPC / モバイルノートPC向けCPUのなかでは、Ryzen 7 4700Uは最上位クラスに位置します。第10世代Core i7-10710U (6コア)に大差をつけており、その差は圧倒的と言っていいでしょう。
ただし特殊な用途のソフト / プロ向けの高度なソフトのなかにはインテルCPU向けに最適化されているものもあり、そのようなソフトではパフォーマンスが伸びない可能性がある点に注意してください。
CPUとの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
15264
|
Core i7-10710U |
13685
|
Ryzen 5 4500U |
12892
|
Core i7-1065G7 |
12016
|
Core i5-1035G4 |
10844
|
Core i7-10510U |
10257
|
Core i5-1035G1 |
9667
|
Core i5-10210U |
9584
|
Ryzen 3 4300U |
9154
|
Ryzen 5 3500U |
8398
|
Ryzen 3 3300U |
6681
|
Core i3-10110U |
5553
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Athlon Silver 3050U |
3851
|
Celeron N4120 |
2771
|
Celeron N4020 |
1658
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUとの性能比較(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
2798
|
Ryzen 5 4500U |
2274
|
Core i7-10710U |
2214
|
Core i7-1065G7 |
1625
|
Ryzen 3 4300U |
1581
|
Core i7-10510U |
1486
|
Core i5-1035G4 |
1480
|
Core i5-1035G1 |
1456
|
Core i5-10210U |
1435
|
Ryzen 5 3500U |
1397
|
Ryzen 3 3300U |
1020
|
Core i3-10110U |
918
|
Ryzen 3 3200U |
643
|
Athlon Silver 3050U |
624
|
Celeron N4120 |
435
|
Celeron N4020 |
328
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ゲーミングノートPC向けCPUとの比較
ゲーミングノートPCやクリエイター向けノートPCで使われる高性能なHシリーズと比較すると、さすがに最新の上位CPUにはかないません。しかし旧世代のCore i7は上回っており、また現行世代のCore i5よりも上です。ゲーミングノートPCに迫るパフォーマンスと言っていいでしょう。
CPUの性能比較 (総合性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 4800H |
4323
|
Ryzen 9 4900HS |
4266
|
Core i9-10885H |
3504
|
Core i7-10875H |
3293
|
Core i7-10750H |
2861
|
Ryzen 7 4700U |
2798
|
Core i7-9750H |
2684
|
Core i7-8750H |
2626
|
Core i5-10300H |
2241
|
Core i5-9300H |
1922
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
デスクトップPC向けCPUとの比較
ゲーミングノートPC向けよりもさらに高性能なデスクトップPC向けCPUと比較すると、Ryzen 7 4700Uは前世代のCore i5-9400と現行世代のCore i5-10400の中間程度です。現行世代のCore i7よりも劣りますが、PCとしてのパフォーマンスはなかなかのもの。非常に高性能です。
デスクトップPC向けCPUとの性能比較(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i7-10700 |
4177
|
Core i7-9700K |
3397
|
Core i7-9700 |
3190
|
Core i5-10400 |
3170
|
Core i7-8700 |
3026
|
Ryzen 7 4700U |
2798
|
Core i5-9400 |
2357
|
Ryzen 5 3400G |
1884
|
Core i3-9100 |
1592
|
Ryzen 3 3200G |
1462
|
Celeron G4930 |
535
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
過去5年間にリリースされたデスクトップPC向けCPUと比較すると、Ryzen 7 4700Uは第7世代のCore i7-7700を上回り、第8世代のCore i7-8700に迫るほどです。4年以上前のPCを使っている人は、買い換えを検討したほうがいいかもしれません。
旧世代のデスクトップPC向けCPUとの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-8700 |
15673
|
Ryzen 7 4700U |
15264
|
Core i7-7700 |
10676
|
Core i7-6700 |
10517
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 7 4700Uのグラフィックス性能
ノートPCに外付けGPUが搭載されていない限り、ウィンドウズのグラフィックス処理にはRyzen 7 4700U内蔵のRadeon Graphicsが使われます。CPU内蔵タイプとしてはかなり優秀で、インテルCore iシリーズ内蔵のUHD GraphicsやIris Plus Graphicsより高性能です。
ただしRyzenモバイルシリーズはメモリーがシングルチャネルで動作しているか、それともデュアルチャネルで動作しているかでグラフィックス性能が大きく変わります。当サイトの検証結果では、動作モードの違いによって1.4倍の差が出ました。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 ※参考 |
8513
|
MX250 |
3400
|
Radeon (Ryzen 7 Dual) |
3384
|
Iris Plus(Core i7) |
2880
|
Radeon (Ryzen 5 Dual) |
2652
|
Radeon (Ryzen 7 Single) |
2364
|
Radeon (Ryzen 3 Dual) |
2324
|
Radeon (Ryzen 5 Single) |
2302
|
Iris Plus(Core i5) |
2236
|
Radeon (Ryzen 3 Single) |
1640
|
UHD (Core i7) |
1335
|
UHD (Core i5) |
1273
|
UHD (Core i3) |
859
|
UHD 600 (Celeron) |
486
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
なお容量の影響は小さく、たとえば16GB×1のシングルチャネル構成よりも4GB×2のデュアルチャネル構成のほうがパフォーマンスが向上する場合があります。Ryzen 7 4700U搭載機種を選ぶ際は、デュアルチャネルに対応していることを確認したほうがいいでしょう。もっともコスパに優れるのは8GB×2の組み合わせです。
デュアル/シングルチャネル別の性能差
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U 16GB×2 |
3619
|
Ryzen 7 4700U 8GB×2 |
3606
|
Ryzen 7 4700U 4GB×2 |
3116
|
Ryzen 7 4700U 16GB×1 |
2406
|
Ryzen 7 4700U 8GB×1 |
2364
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
Ryzen 7 4700Uのゲーム性能
ゲーム系ベンチマークを試したところ、動作がごくごく軽いドラクエ10では快適に楽しめるとの評価でした。リーグ・オブ・レジェンド (LoL)やPSO2など同程度のゲームであれば、画質を調整することで楽しめるでしょう。FF14など少し重めのゲームではフルHDでは厳しいものの、解像度と画質を落とせばなんとかプレーできるかもしれません。
人気のFPSやTPSについては、軽めのタイトルであれば最低画質で常時60FPSオーバーをクリアーできそうです。画質がプレーに影響しないゲームなら、問題なく楽しめるでしょう。
※テスト機はThinkPad E15 Gen 2 (AMD) (8GBメモリー×2)で、フルHDで実施
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 766 / 動作困難 |
標準品質 | 1775 / 動作困難 |
軽量品質 | 2278 / 重い |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (中量級 / DX11)
画質 | スコア / 評価 / 平均FPS |
最高品質 | 2890 / 19.1 FPS |
高品質 | 3966 / 26.9 FPS |
標準品質 | 5231 / 35.8 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽量級 / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 9526 / とても快適 |
標準品質 | 11978 / すごく快適 |
低品質 | 13083 / すごく快適 |
PSO2ベンチ (軽い / DX9)
簡易描画設定 | スコア |
6 (最高) | 2,837 |
3 | 14,087 |
1 (最低) | 54,818 |
※スコア5,000以上が快適に遊べる目安
リーグ・オブ・レジェンド (超軽量級 / DX9)
モード | 平均FPS / 最低FPS |
サモナーズリフト (最高画質) | 130 FPS / 110 FPS |
TFT (最高画質) | 137.2 FPS / 16 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
PUBG LITE (軽い / DX11)
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
ウルトラ | 29.7 FPS / 26 FPS |
高 | 39 FPS / 32 FPS |
中 | 46.9 FPS / 40 FPS |
低 | 59.4 FPS / 49 FPS |
非常に低い | 84.9 FPS / 70 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
オーバーウォッチ (軽い / DX10)
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
エピック | 26.9 FPS / 23 FPS |
ウルトラ | 40.8 FPS / 35 FPS |
高 | 57.7 FPS / 51 FPS |
NORMAL | 60.9 FPS / 55 FPS |
低 | 77.6 FPS / 68 FPS |
※レンダースケール100%、平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
Ryzen 7 4700U搭載機種ごとの違い
当サイトでは2020年9月までに、Ryzen 7 4700U搭載モデルを6機種検証しています。検証数は多くありませんが、ある程度は参考になるはずです。今後検証機種が増えれば、データを更新します。
Ryzen 3 4300U搭載機別のベンチマーク結果
機種名 | CINEBENCH R20 | CPU Mark | Fire Strike Graphics score |
---|---|---|---|
ThinkPad E15 Gen 2 (AMD) | 2576 | 15166 | 3612 |
Inspiron 15 5505 | 2745 | 14205 | 2364 |
HP ENVY x360 15 (AMD) | 2847 | 15767 | 3581 |
IdeaPad Slim 550 14 | 3067 | 15605 | 3154 |
VivoBook S15 M533IA | 2847 | 15605 | 3154 |
Zenbook 14 UM425IA | 2768 | 15678 | 3428 |
※製品名クリックでレビューをご覧いただけます
高性能すぎる上級者向けCPU
Ryzen 7 4700Uの登場により、ノートPCのパフォーマンスは劇的に向上しました。あまりにも高性能すぎるので、人によってはオーバースペックかもしれません。普段使いならRyzen 3 4300UやRyzen 5 4500Uでも十分でしょう。高いパフォーマンスを安く入手したい上級者向けです。
ただし前述のとおり、Ryzenモバイルシリーズはメモリーがシングルチャネルだと本来の性能を発揮できません。ノートPCを選ぶ際はできればメモリー容量が8GB以上でデュアルチャネルのモデルを選んでください 。8 / 16GBでもシングルチャネルの場合があるので注意が必要です。
Ryzen 7 4700U搭載であれば、メモリー容量が4GBであることはまずありません。ですが、8GBや16GB搭載ででシングルチャネル動作の機種はいくつか存在します。購入の際は事前にスペックを確認してください。
メモリー構成による見分け方
メモリースロット×2 | デュアル化可能 |
---|---|
メモリースロット×1 | オンボードメモリーがあればデュアル化の可能性あり。ないならシングル動作 |
メモリースロットなし | 8GB以上ならデュアル動作の可能性あり |
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