レノボの『IdeaPad Flex 570(14型 AMD)』(以下、”IdeaPad Flex 570″)は、14インチディスプレイが回転するタイプの2-in-1ノートPCです。CPUとして使われているZen2世代のモバイルRyzen 5000シリーズはすでにやや古いものの、上位のRyzen 7 5700Uはまだまだ十分高性能。そのぶん同クラス製品に比べてお得に入手できます。

画面が回転するタイプの2-in-1ノートPC
今回試用したRyzen 7 / 16GBメモリー / 512GB SSDのモデルは性能面にまったく不安がないものの、筐体やディスプレイ、キーボードにややチープな印象を受けました。とは言えギリ9万円切りであることを考えれば、十分納得できるクオリティーです。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 1920×1200ドット IPS 光沢 300nit 45% NTSC タッチ/ペン対応 |
CPU | Ryzen 5 5500U / Ryzen 7 5700U |
メモリー | 8 / 16GB LPDDR4x-4266 ※オンボード |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
通信 | 11a/b/g/n/ac、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(USB PD充電 / 映像出力対応)×1、USB3.2 Gen1×2、HDMI1.4b、SDカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋認証 |
サイズ / 重量 | 幅313.1mm、奥行き224.9mm、高さ17.8mm / 約1.55kg |
バッテリー | 最大13時間 |
本体デザイン

IdeaPad Flex 570の外観。本体カラーはストームグレー。実際にはガンメタルのような色合いです

ボディは樹脂(プラスチック)製。ややザラつきのある手触りで、指紋の跡が少し残ります

ノートPCとしてはスタンダードなデザイン

ディスプレイを開いた状態

キーボード面も樹脂製。天板よりも固く作られていますが、ややチープな印象です

ベゼルはそこそこ細め。カメラのある部分だけやや飛び出ています

インターフェースは多くはありませんが、回転して使うことが多い2-in-1であることを考えれば十分でしょう

電源アダプターは65Wの丸口タイプで重さは351g。Type-Cからの充電も可能です

スピーカーはキーボード両脇に配置されています。中~高音域はクリアーですが、全体的に音は軽め。動画視聴やビデオ開始には問題ないクオリティーですが、音楽視聴向けではありません

本体の形状によって音の聞こえ方が変わります。特にスタンドスタイルだと音の出る部分が接地面でふさがれるので、音がこもって聞こえました

Webカメラはプライバシーシャッター付き。写真撮影は92万画素、動画撮影は720p 30fpsに対応しています

キーボード右下には指紋センサー

排気口はこの部分。ノートPCスタイルだと、温められた排気がディスプレイに当たります

底面部
サイズと重量

設置面積は幅313.1mm×奥行き224.9mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。A4サイズよりもひと回り大きい程度で、14インチタイプとしては一般的な大きさです

高さは実測で19.6mm(突起部を除く)

底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは20.2mm。設置時はやや厚く感じます

重さは実測で1.585kg。最近の14インチタイプとしてはやや重めです
ディスプレイについて

ディスプレイのサイズは14インチで、解像度は1920×1200ドット

色域は45% NTSCで、格安ノートPC向けのパネルが使われています。一応はIPSパネルなのでそこそこ自然な色合いですが、取り立てて鮮やかというほどでもありません

明るさは300nit。数値的には明るいはずですが、実際の映像はそれほど明るくは感じません。ただし作業には問題ない明るさです

光沢ありのグレアパネルのため、背景や照明が映り込む場合があります。反射はややキツめですが、画面の角度を変えれば気になりにくいでしょう
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列。バックライトには非対応です

配列は標準的ですが、一部のキーが隣接しています

キーストロークは浅く、タイプ感は軽め。指をあまり上げ下ろしせずに、軽いタッチで入力する人に向いています。物足りなく感じるなら、外付けキーボードを使うのもアリ

タイプ音はわずかにカタカタと聞こえますが、うるさく感じるほどではありません。ただし強く叩くと音がパチパチと響くので注意

手書き入力用のペンが付属

単6電池を使用

USB端子に挿して使う付属のペンホルダー
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 5700U(8コア/16スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Lenovo Vantage」の「電源およびパフォーマンス」を最高設定の「エクストリーム・パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、モバイルRyzen 5000シリーズが使われています。リリースとしては3世代前のCPUでわりと古めですが、上位のRyzen 7 5700Uであれば十分な性能と言っていいでしょう。大作ゲームや高度な動画編集などには向きませんが、あらかたの作業は快適にこなせるはずです。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 10 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U | 22327 |
Ryzen 7 5825U | 20302 |
Core i7-1260P | 20058 |
IdeaPad Flex 570(Ryzen 7 5700U) | 19035 |
Ryzen 5 5625U | 18897 |
Core i5-1240P | 18571 |
Ryzen 7 5700U | 18157 |
Core i7-1255U | 17176 |
Core i5-1235U | 13951 |
Core i7-1165G7 | 11723 |
Core i3-1215U | 11681 |
Core i5-1135G7 | 11249 |
Ryzen 5 7520U | 10124 |
Core i3-1115G4 | 6750 |
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U | 10183 |
Ryzen 7 5825U | 9740 |
Core i7-1260P | 9254 |
Core i5-1240P | 8928 |
IdeaPad Flex 570(Ryzen 7 5700U) | 8591 |
Ryzen 7 5700U | 8304 |
Ryzen 5 5625U | 8267 |
Core i7-1255U | 7819 |
Core i5-1235U | 7708 |
Core i3-1215U | 6216 |
Core i5-1135G7 | 4932 |
Core i7-1165G7 | 4711 |
Core i3-1115G4 | 3378 |
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphicsが使われます。3Dベンチマークテストの結果は、内蔵GPUタイプとしては標準的な結果でした。ゲームやクリエイター向けソフトでの効果は多少見込めますが、専用GPU搭載機ほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 | 3241 |
Radeon 680M(Ryzen7) | 2211 |
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) | 1528 |
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) | 1302 |
IdeaPad Flex 570(Ryzen 7 5700U) | 1266 |
Iris Xe(Core i7+DDR4) | 1149 |
Radeon (Ryzen 7) | 1000 |
Iris Xe(Core i5+DDR4) | 977 |
UHD(Core i3) | 900 |
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。ただしコンテンツ制作系は、若干弱い印象を受けます。文字や数値中心の作業、ネットの調べ物などの作業向きです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 | 9085 9984 10606 10594 10647 10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 | 7271 9266 8578 9536 6968 6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 | 5652 5987 7972 6685 5997 6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
ゲーム性能
ゲーム系ベンチマークを試したところ、ごくごく軽いドラクエ10ベンチなら快適との評価が出ました。同程度のタイトルとしては競技系のヴァロラントや、UWPアプリの小規模タイトルなどが挙げられます。ちょっとでも重いソフトは、かなり厳しいでしょう。
なお画面のアスペクト比(縦横比率)が16:10のため、一部のゲームでは映像の比率がゆがんだり、上下に黒い帯(非表示領域)が出たりするかもしれません。
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 3167 / 21.7 FPS |
高品質 | 4118 / 28.6 FPS |
標準品質 | 5114 / 36 FPS |
※1920×1080ドットの結果
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)

画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 9430 / すごく |
標準品質 | 11826 / すごく快適 |
低品質 | 12292 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
狙い目はRyzen 7モデル
3世代前のCPUが使われているのですが、上位のRyzen 7 5700Uモデルであれば十分な性能です。記事執筆時(2023年2月)の価格は、Ryzen 7 / 16GBメモリー / 512GB SSDの構成で8万9980円。デジタルペンが付属する2-in-1としては、なかなかお買い得と言っていいでしょう。
回転しないノートPCの『IdeaPad Slim 570』はCPUが新しいぶん性能は高いものの、Ryzen 7 / 16GBメモリー / 512GB SSDで価格は10万円ちょっと。悪くはないのですが、お得感ではIdeaPad Flex 570のほうが勝っています。

性能面でのコスパはなかなか優秀
しかし外観が格安機レベルである点が気になります。アスペクト比16:10のディスプレイを採用するなどトレンドを取り入れようとしていますが、パネルやカメラ、ボディなどの品質があまり高くなく、随所にチープな面が見られました。それでもお買い得な機種ではあるので、外観面を気にしないならアリです。
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