2015年春モデルのパソコンでは、多くのモデルにBroadwell世代の最新CPUが搭載されています。なかでも特に多いのは「Core i3-5005U」と「Core i5-5200U」、そして「Core i7-5500U」の3種類。この3種類はなにが違うのか、また旧世代のCPUとなにが異なるのかについて紹介します。
そもそもBroadwellってなに?
まずはじめに、「Broadwell(読み方:ブロードウェル)」について説明しましょう。
インテルのCPUは毎年新たなラインナップが加わります。そのラインナップには「開発コード(正式発表前の仮の名前)」が付けられているのです。2015年1月に正式発表された新型CPUは、Broadwellという開発コードで呼ばれていました。正式には「第5世代インテルCoreプロセッサー」という名前なのですが、これではわかりづらいですよね。そこで、いつ発売されたCPUなのかをわかりやすくするために、Broadwellと呼んでいるのです。
ちなみに、Broadwell以前のCPUには以下の開発コードが使われていました。
最近のCPUに使われている開発コード | ||
正式名称 | 開発コード | 発表年 |
---|---|---|
第4世代Core iプロセッサー | Haswell | 2013年6月 |
第3世代Core iプロセッサー | Ivy Bridge | 2012年4月 |
第2世代Core iプロセッサー | Sandy Bridge | 2011年1月 |
なお2015年1月に発表されたのは、モバイルパソコン向けの「Broadwell-U」シリーズです。実はそれ以前にも、2014年9月にタブレット向けの「Broadwell-Y」が発表されています。こちらは正式名称「Core-M」シリーズとして、現在発売中のタブレットや2-in-1パソコンで使われています。
主要なCPUの性能の違いは?
2015年春モデルパソコンの多くは、Broadwell世代のCPUを搭載しています(Haswell世代搭載のモデルもある)。特によく使われているのは「Core i3-5005U」と「Core i5-5200U」、そして「Core i7-5500U」の3種類です。性能としてはCore i7がもっとも高く、その次にCore i5、Core i3と続きます。
Core iシリーズの分類
- Core i7 → 性能が高く、ハイエンド向けのパソコンに搭載されることが多い
- Core i5 → 性能はやや高め。標準モデルでよく使われる
- Core i3 → 価格が安い代わりに、性能がある程度抑えられている
「Core i3-5005U」、「Core i5-5200U」、「Core i7-5500U」のスペックの違いは、以下の表のとおりです。
各CPUの性能の違い | |||
名称 | Core i3-5005U | Core i5-5200U | Core i7-5500U |
---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/4 | ||
動作周波数 | 2GHz | 2.2GHz | 2.4GHz |
最大動作周波数 | - | 2.7GHz | 3GHz |
TDP | 15W | ||
cTDPダウン | 10W、600MHz | 7.5W、600MHz | |
キャッシュメモリー | 3MB | 4MB | |
内蔵グラフィックス | インテルHDグラフィックス5500 |
各項目の概要
- コア数/スレッド数 → 計算処理を行なう回路とデータ経路の数。多いほど高性能
- 動作周波数 → CPUの処理能力の速さを表わす
- 最大動作周波数 → 一時的に高速化したときの周波数
- TDP → 消費電力量を表わす指針。数値が低いほど省電力性に優れる
- cTDPダウン → 周波数を下げて一時的にTDPを減らす機能
- キャッシュメモリー → CPU用のメモリー。多いほど高性能
- 内蔵グラフィックス → 画面の描画サポートする機能。内蔵GPUとも
それぞれの特徴を大まかにまとめると、以下のようになります。
Core i7とCore i5、Core i3それぞれの特徴(モバイルパソコン向けのUシリーズ)
- Core i7は動作周波数が高くキャッシュメモリーが多いぶん性能が高い
- Core i5はCore i7よりもやや性能が低い代わりに値段が安い
- Core i3はさらに安いが処理能力や省電力性能が劣る。さらにターボブースト非対応
前世代のCPUと性能はどれだけ変わったのか?
インテルによると、Broadwell世代のCPU(Core i7-5600U)とHaswell世代のCPU(Core i7-4600U)では、性能は以下のように変わったとのことです。すべてのCPUに当てはまるわけではありませんが、ある程度は性能が向上していると考えていいでしょう。
Broadwell世代のCPUはこれだけパワーアップした
- 3Dグラフィックス性能は22%向上
- 動画の変換が50%高速化
- 生産性が4%向上
- バッテリー駆動時間が1.5時間延長
では今回取り上げた3種類のCPUについて、旧世代の同クラスCPUと比較してみましょう。
Core i7-5500Uと Core i7-4510Uの違い
Core i7-5500UはHaswell(Haswell Refresh)世代のCore i7-4510Uと比べて、動作周波数が0.4GHzほど向上しました。最大動作周波数はやや低くなっていますが、おそらく大きな影響はないと思われます。またcTDPダウンの下げ幅が広がり、省電力性能も向上しています。内蔵グラフィックスについては、インテルHDグラフィックス5500にアップデートされました。
Core i7-5500UとCore i7-4510Uの違い | ||
名称 | Core i7-5500U | Core i7-4510U |
---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/4 | |
動作周波数 | 2.4GHz | 2GHz |
最大動作周波数 | 3GHz | 3.1GHz |
TDP | 15W | |
cTDPダウン | 7.5W、600MHz | 11.5W、800MHz |
キャッシュメモリー | 4MB | |
内蔵グラフィックス | インテルHDグラフィックス5500 | インテルHDグラフィックス4400 |
Core i7-5500UとCore i7-4500Uのベンチマーク結果
CPUの性能を計測する「Geekbench 3」では、Core i7-5500UのほうがCore i7-4510Uよりもわずかに高い結果となっています。
しかし同じくCPU性能を計測する「PassMark」では、Core i7-4500Uのほうで高いスコアが出ています。
筆者が他媒体の仕事でレビューした機種でも、Core i7-5500UよりCore i7-4510Uのほうが「CINEBENCH」のスコアが上でした。最大動作周波数が100MHz下がっているので、総合的なパフォーマンスが若干低下している可能性はあります。
しかし「Geekbench 3」ではCore i7-5500Uのほうがスコアが上ですので、マシン環境や評価方法によって変わってくるのかもしれません。どちらが上というよりも、現在は「どちらも同じ程度の性能」と捉えたほうがいいでしょう。
処理能力については大きく変わっていませんが、CPUの省電力性能と内蔵グラフィックス性能については向上しているはずです(Intel HD GraphicsのスコアはPCのメインメモリー容量によって変化する場合があるので別の機会に検証します)。その点で、新しいCore i7を選ぶメリットはあります。
なお下記の記事で、Core i7-5500Uを搭載した実機のベンチマーク結果を紹介しています。興味のある方は、ぜひご覧ください。
Core i5-5200Uと Core i5-4210Uの違い
Broadwell世代のCore i5-5200Uは、Haswell(Haswell Refresh)世代のCore i5-4210Uと比べて動作周波数が0.5GHzと大きく向上しています。またCore i7-5500Uと同様に、省電力性能とグラフィックス性能が改善されました。
Core i5-5200UとCore i5-4210Uの違い | ||
名称 | Core i5-5200U | Core i5-4210U |
---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/4 | |
動作周波数 | 2.2GHz | 1.7GHz |
最大動作周波数 | 2.7GHz | 2.7GHz |
TDP | 15W | |
cTDPダウン | 7.5W、600MHz | 11.5W、800MHz |
キャッシュメモリー | 4MB | |
内蔵グラフィックス | インテルHDグラフィックス5500 | インテルHDグラフィックス4400 |
Core i5-5200UとCore i5-4210Uのベンチマーク結果
CPU性能を計測する「Geekbench 3」の結果を見てみると、シングルコアの処理能力でCore i5-5200Uは5.5%ほどしか向上していません。しかしマルチコアの結果では約25%と性能が大きく向上しています。
一方「PassMark」の結果を見てみると、3.8%程度の性能向上です。
負荷の軽い作業においては、両CPUの違いはそれほど感じられないでしょう。しかし動画編集やエンコードなど、並列処理を利用する負荷の高い作業になるとCore i5-5200UとCore i5-4210Uのパワーの違いを感じられるはずです。
Core i3-5005UとCore i3-5010U、Core i3-4030Uの違い
Broadwell世代のCore i3としては、Core i3-5005UとCore i3-5010Uがよく使われているようです。Haswell世代でよく使われたCore i3-4030Uとの違いについては、以下の表のとおりです。
Core i3-5005UとCore i3-5010U、Core i3-4030Uの違い | |||
名称 | Core i3-5010U | Core i3-5005U | Core i3-4030U |
---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/4 | ||
動作周波数 | 2.1GHz | 2GHz | 1.9GHz |
最大動作周波数 | -(ターボブースト非対応) | ||
TDP | 15W | ||
cTDPダウン | 10W、600MHz | 11.5W、800MHz | |
キャッシュメモリー | 3 MB |
||
内蔵グラフィックス | インテルHDグラフィックス5500 | インテルHDグラフィックス4400 |
Core i3カテゴリーではメインのCPUがCore i3-4030UからCore i3-5005U/Core i3-5010Uへと世代交代したわけですが、動作周波数の向上はごくわずかです。またやはりBroadwell世代では省電力性能とグラフィックス性能が向上しています。
Core i3-5010UとCore i3-5005U、Core i3-4030Uのベンチマーク結果
続いてベンチマーク結果から、Broadwell世代のCore i3がどれくらいパフォーマンスアップしているのか見てみましょう。「Geekbench 3」からは確かに性能アップしていることがわかりますが、それほど大きな差ではありません。
「PassMark」の結果でも、最大で16%程度のパフォーマンスアップです。
省電力性能とグラフィックス性能は向上しているとのことですが、CPUの計算性能自体はそれほど変わらないことがわかります。
BroadwellはCore i5-5200Uが狙い目!
ではBoradwell世代のCPUを搭載したパソコンを買う場合、どのCPUを選べばいいのでしょうか。そのひとつの指針として、「1ドルあたりのPassMarkスコア」という数値を出してみました。これは単純に「PassMark」のベンチマーク結果を、CPU価格(インテルの希望カスタマー価格)で割った数値です。この値が大きいほど、コストパフォーマンスが高いということを表わします。
上記のグラフを見ると、Core i5-5200Uがもっともコストパフォーマンスが高く、Core i7-5500Uは値段が高い割に性能がいまひとつであることがわかります。実際にはそのほかのパーツや機能で選ぶことになると思いますが、CPU性能と価格で悩んでいる方は参考にしてください。たとえばCPUの種類を変えられるカスタマイズモデルなどで参考になるのではないでしょうか。
なおこの指針はかなり乱暴な考え方なので、あくまでも目安のひとつとして捉えてください。
以上のように、Broadwell世代のUシリーズは旧世代のHaswellシリーズと比べて性能が大きく向上しているわけではないことがわかります。ただしモデルによっては、バッテリー駆動時間が長くなっているかもしれません。持ち歩き時の使い勝手を考えるなら、Broadwell世代の新型CPUを搭載したパソコンを選んだほうがいいでしょう。持ち歩く機会が少ないなら、型落ちして値段が下がった前モデルを狙うという手もあります。用途に応じて、モデルを選んでください。
Core i7搭載の格安モデルを紹介
ほかの記事では、Core i7シリーズを搭載した格安なノートパソコンを紹介しています。高性能で価格の安いパソコンをお探しの方は、ぜひご覧ください。