インテルのCore i5-8200Yは、2018年後半から2019年に発売されたタブレットPC / ノートPCで使われているCPUです。消費電力が低いため、CPUからの発熱がそれほど高くない点が特徴。空冷ファンのない、いわゆる「ファンレス」のPCでよく使われています。
Core i5-8200Y概要
世代 | 第8世代 |
---|---|
開発コード | Amber Lake Y |
コア数 / スレッド数 | 2 / 4 |
動作周波数 | 1.30GHz |
最大動作周波数 | 3.90GHz |
TDP | 5W |
内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics 615 |
この記事ではこれからタブレットPC / ノートPCを購入しようとしている方のために、Core i5-8200Yの性能について紹介します。
https://little-beans.net/tokushu/corei5-laptop/
Yシリーズは性能控えめ
まずはじめに知っていただきたいのは、Core i5-8200Yは省電力PC向けのCPUであるため性能は高くないという点です。
CPU名の末尾に付いている「Y」は省電力版であることを表わすもので、従来のインテル製CPUで使われてきました。しかし2014年に発表された第5世代 (開発コード:Broadwell)から「Core m」という名称に変わり、さらに2016年発表の第7世代 (開発コード:Kaby Lake)ではCore m5が「Core i5」、Core m7が「Core i7」に変わっています。その上またもや2018年発表の第8世代 (開発コード:Amber Lake Y)では2013年以前と同じような名称に戻っているのです。
Yシリーズ名称の変遷
世代 | CPU名の例 |
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第4世代 (Haswell) | Core i5-4200Y |
第5世代 (Broadwell) | Core M-5Y51 |
第6世代 (Skylake) | Core m5-6Y54 |
第7世代 (Kaby Lake) | Core i5-7Y54 |
第8世代 (Amber Lake Y) | Core i5-8200Y |
ノートPCでよく使われるのは、「Y」シリーズではなく「U」シリーズです (以前は「M」シリーズもよく使われていました)。「Core i5-4200Y」と「Core i5-4200U」では区別が付きづらいため、インテルはYシリーズを「Core m」という名称に変えたのだと思われます。
ところが実際のところ、Core mシリーズはあまり使われませんでした。12インチのMacBookなどでは使われていたもののノートPCでの主流はUシリーズで、Yシリーズを搭載したモデルは少なかったのです。
その後インテルは第7世代から一部のCore mシリーズをCore iシリーズに変え、さらに第8世代から2013年以前とまったく同じ名付け方に戻しました。もしかすると広く知れ渡った「Core i5」や「Core i7」の名前を付けることで、YシリーズのCPUをもっと使ってもらおうという狙いがあったのかもしれません。
しかしながら名称規則を戻したことで、またもやCPUを区別しにくくなってしまいました。たとえば第8世代ならUシリーズは「Core i5-8250U」でYシリーズは「Core i5-8200Y」。4桁の数字部分は違うものの、PCに詳しくない人ならどちらも同じようなCPUだと勘違いするかもしれません。
ところがこのふたつは性能がまったく違うのです。
Core i5-8200YとCore i5-8250Uの性能比較
CPU | CINEBENCH CPUスコア |
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Core i5-8250U |
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Core i5-8200Y |
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Celeron N4000 |
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※2019年4月時点での当サイトの平均値
末尾が「Y」のCPUは省電力版で、あくまでタブレットや小型PCのためのもの。ノートPCでよく使われているのは末尾が「U」のCPUであることを念頭に置いてください。普通のノートPCとしてCore i5-8200Y搭載モデルを検討しているなら、まずはいったん保留にしておくことをおすすめします。
Core i5-8200Yのベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Core i5-8200Y本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
CPUの総合的な性能を計測する「PassMark CPU Mark」では、2~3年前に使われていた第7世代のCore i5-7200Uよりもやや劣る結果が出ました。最新のCore i5に比べると、52~53%程度の性能でしかありません。前世代のYシリーズよりはパフォーマンスが多少が向上しているものの、一般的な「Core i5搭載ノートPC」よりも性能は低めです。
CPUの性能比較(一般向けノートPC)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
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Core i5-8250U (第8世代) |
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Core i5-8265U (第8世代) |
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Core i3-8130U (第8世代) |
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Core i5-7200U (第7世代) |
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Core i5-8200Y (第8世代) |
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Core m3-7Y30 (第7世代) |
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Core i3-7100U (第7世代) |
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Core m5-7Y54 (第7世代) |
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Pentium 4415Y |
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※2019年4月時点での当サイトの平均値
最近では大学でノートPCがよく使われますが、推奨するノートPCとして「CPUはCore i5以上」という条件が設定されていることがあります。しかし同じCore i5でも、Core i5-8200Yではギリギリなんとかなるレベル。4年間使い続けることを考えると、将来的にパフォーマンス不足に感じるかもしれません。
格安ノートPC向けCPUとの比較
3~4万円台の格安PC向けCPUと比べると、さすがにCore i5-8200Yのほうが高性能です。とは言え、Core i5-8200Yは標準タイプのノートPCよりも、格安PC寄りのパフォーマンスと言えます。
CPUの性能比較 (格安ノートPC)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
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Core i5-8200Y (第8世代) |
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Core i3-6006 (第6世代) |
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Pentium N5000 |
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Celeron N4100 |
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Celeron 3865U (第7世代) |
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E2-9000 |
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Celeron N4000 |
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※2019年4月時点での当サイトの平均値
Core i5-8200Y搭載機種ごとの違い
当サイトでは2019年4月上旬時点までに、3機種のCore i5-8200Y搭載モデルを検証しています。それぞれのベンチマーク結果は以下のとおり。今後Core i5-8200Y搭載機種を検証する機会があれば、データを随時更新します。
Core i5-8200Y搭載機別のベンチマーク結果
機種名 | CINEBENCH R15 | CPU Mark | サイズ |
---|---|---|---|
HP Spectre Folio 13-ak0000 | 307 | 5051 | 13.3インチ |
VAIO A12 | 217 | 4203 | 12.5インチ |
LAVIE Direct NM 2019 | 178 | 3898 | 12.5インチ |
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ベンチマークスコアの平均値が低かったのは、LAVIE Direct NMが足を引っ張ったからでした。とは言え、仮にLAVIE Direct NMの結果が含まれていなかったとしても、性能的な位置づけは変わりません。
LAVIE Direct NMの結果がよくないのは個体差の可能性も考えられますが、2018年発売の前モデルでもベンチマークスコアが低かったので、そういう機種だと考えられます。
いずれにせよ個別の結果を確認しても、Core i5-8200Yは高いパフォーマンスを出せるCPUでないことがおわかりいただけるでしょう。
ファンレスやタブレットにこだわりたい人向け
Core i5-8200Yの性能は控えめですが、簡単な事務処理やオフィスを使った資料作成には十分です。日常的な用途でも活用できるでしょう。Core i5のUシリーズよりも性能が低いと言うだけで、PCとして使えないわけではありません。ただ動画や写真の加工など、重い処理には適していないだけです。
またCore i5-8200YはCPUの発熱が高くないので、PC本体を小型化 / ファンレス化できるというメリットがあります。特にファンレス仕様のモデルでは駆動音 (ファンの回転音や排気音)がまったく聞こえないのでとても静か。静音性にこだわりたい人におすすめです。
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