
※検証機は当サイトで購入しました
CHUWI(ツーウェイ)の『HeroBox 2023』は、人気のIntelプロセッサーN100(以下、”Intel N100″)を搭載するコンパクトサイズのミニPCです。販売価格は2万円をちょっと切る程度ですが、タイミングによってはクーポンやポイント還元でかなり安くなることもあります。

HeroBox 2023 ※利用には別途キーボードとマウス、外付けディスプレイが必要です
記事執筆時の価格
販売サイト | 価格 |
---|---|
アマゾン | 1万8000円~1万9000円(クーポン適用後) |
楽天 | 1万9900円+ポイント還元 |
※2023年10月20日時点
安いだけあって、ほかのミニPCよりもわずかに劣る点がいくつかあります。たとえば「メモリーが8GB固定で増設不可」や「Type-Cはデータ通信のみ」、「SSDがNVMeより低速なSATA接続」など。ただしなんと言っても値段が安いので、割り切って使うにはアリです。
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
スペック
発売 | 2023年6月 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
グラフィックス | UHD Graphics (CPU内蔵) |
メモリー | LPDDR5 8GB |
ストレージ | 256GB SATA SSD |
インターフェース | USB Type-C(データ通信のみ)×1、USB3.0×2、USB2.0×2、3.5mmヘッドホン端子×1、HDMI(4K@60Hz)、VGA(D-sub15ピン)×1、有線LAN×1 |
拡張スロット | なし |
ドライブベイ | 2.5インチ×1 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、有線LAN(1Gbps) |
サイズ / 重量 | 幅187.6×奥行き138.3×高さ37.3mm / 約505g |
電源 | 36W アダプター、VESAマウント |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
格安PCのなかには個人利用不可のボリュームライセンス(VL)が使われていることがありますが、HeroBox 2023では正規版のライセンスが使われているのを確認しています。

アクティベーションの前後で正規のOEMライセンスであることを確認
認証マークについて
技適マークやPSEマークについても、ちゃんと掲載されています。しっかりと手続きが行なわれた機種です。

無線通信の利用に必要な技適マーク

「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマーク
本体デザイン
HeroBox 2023の本体は、デスクトップPCとしてはコンパクトです。ただし最近のミニPCとしては、若干大きく作られています。ややクセのある独特の外観ですが、気になるならVESAマウンタでディスプレイ背面に設置するといいでしょう。

HeroBox 2023のパッケージ

パッケージ内容。VESA対応ディスプレイ用のマウンタ(アタッチメント)が付属しています

HeroBox 2023の外観、本体カラーはブラックで、ケースは樹脂(プラスチック)製。価格が安いだけあって、それなりの安っぽさがあります

左から、同じCHUWI製のLarkBox、HeroBox 2023、一般的なミニPCサイズのBeelink Mini S12 Pro。ミニPCのなかではサイズが大きめです

高さ(厚み)はやや控えめ

設置面積は幅187.6mm×奥行き138.3mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較

高さは37.3mm。設置面積は大きいのですが、ミニPCのなかではスリムです

重さは実測で500g

付属の電源アダプターは、36Wの丸口タイプ。重さは実測で140g

本体前面にはUSB Type-C(データ通信のみ)、USB3.0×2、microSDカードスロット、リセットボタン、電源ボタン

背面には電源コネクター、VGA(D-sub15ピン)、HDMI、有線LAN、USB2.0×2、3.5mmステレオジャック

側面には左側にセキュリティースロット(ケンジントンロック)がある程度で、ほかには用意されていません

底面部にはVESAマウンタを利用するための挿し込み口が用意されています
メモリー/SSDの増設について
LarkBox X 2023では、SSDのみ交換可能です。メモリーはオンボードのLPDDR5のため、増設 / 換装は行なえません。またSSDは2.5インチSSDの増設は簡単ですが、M.2 2280 SATA SSDの交換にはちょっと手間がかかります。

底面カバーを外した状態(精密ドライバーが必要です)

ネジを外す際に、底面部の封印シールを破く必要があります。このシールを破くとメーカー保証のサポート外となるので、自己責任の上で作業してください

2.5インチストレージなら、このまま端子にはめ込むだけでOK

M.2 SSDを換装するには、さらにネジを外してカバーを外します

さらにネジを外して、マザーボードをケースから外します。このとき、Wi-Fiのアンテナ線がケースにつながっているので、引きちぎらないよう注意してください

使われていたのはAirDiskの「AFF10-256G」
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
---|---|
メモリー | 8GB LPDDR5 |
ストレージ | 256GB SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「高パフォーマンス」に設定した上で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けでAlder Lake-N世代のIntelプロセッサーN100が使われています。4コア4スレッドで動作するCPUで、TDP(消費電力量の目安)は標準で6W。ただしHeroBox 2023ではPL1が12W、PL2が35Wに設定されていました。電力制限の上限が大きいぶん、ほかのIntelプロセッサーN100搭載機よりも高いパフォーマンスを発揮できると考える人もいるでしょう。
しかしCPUベンチマークテストの結果をほかのIntelプロセッサーN100搭載ミニPCと比較したところ、ミニPCのなかでは低めの結果が出ました。このあたりはメモリー容量や熱設計 / 熱対策も影響する部分なので、電力制限だけで性能が大きく変わることはないと思われます。
Intel N100搭載ミニPCの性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
LarkBox X 2023(PL1:15W、PL2:35W) | 6235 |
SkyBarium Mini PC(PL1:12W、PL2:20W) | 6219 |
Beelink S12 Pro(PL1:20W、PL2:25W) | 6134 |
HeroBox 2023(PL1:12W、PL2:35W) | 6165 |
Intel N100平均値 | 5622 |
※平均値はPassMark CPU Benchmarksによる集計値、そのほかは当サイトの計測値
ノートPC向けCPUとベンチマークスコアを比較すると、現行世代のCPUのなかでは下位クラスです。より高性能なデスクトップPC向けCPUとでは、その差はさらに大きく広がります。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U | 21043 |
Core i5-1340P | 20760 |
Core i7-1360P | 19623 |
Ryzen 7 7730U | 18979 |
Core i5-1335U | 18240 |
Ryzen 5 7535U | 17163 |
Ryzen 5 7530U | 16196 |
Core i7-1355U | 15636 |
Core i3-1315U | 13033 |
Ryzen 3 7330U | 10909 |
Core i3-N305 | 10265 |
Ryzen 5 7520U | 9759 |
Ryzen 3 7320U | 9249 |
HeroBox(Intel N100) | 6165 |
Intel N100 | 5622 |
Athlon Silver 7120U | 3088 |
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
軽めの作業で強く影響するシングルスレッド(シングルコア)のスコアで見ても、やはり低めの結果です。ただし上記の総合性能の結果ほど、他CPUとの差は大きくありません。数値的には、ネットの調べ物や動画視聴などの軽めの作業であれば十分なスコアです。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-1360P | 3670 |
Core i5-1335U | 3665 |
Core i7-1355U | 3606 |
Core i3-1315U | 3573 |
Ryzen 7 7735U | 3289 |
Ryzen 7 7730U | 3228 |
Ryzen 5 7530U | 3136 |
Ryzen 5 7535U | 3105 |
Ryzen 3 7330U | 3089 |
Ryzen 5 7520U | 2573 |
Ryzen 3 7320U | 2485 |
Core i3-N305 | 2279 |
Athlon Silver 7120U | 2103 |
HeroBox(Intel N100) | 2085 |
Intel N100 | 1971 |
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 | 3241 |
Radeon 680M(Zen3+) | 2211 |
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) | 1528 |
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) | 1302 |
Radeon (Zen3) | 1204 |
Iris Xe(Core i7+DDR4) | 1149 |
Radeon (Zen2+) | 1000 |
Iris Xe(Core i5+DDR4) | 977 |
UHD(Core i3) | 900 |
LarkBox X 2023(Intel N100) | 328 |
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージには、256GBのSATA SSDが使われています。テスト機で使われていたのは「AirDisk 256GB SSD」と認識されるSSD(AFF10-256G)で、おそらく「AirDisk」というブランド名なのでしょう。アクセス速度計測結果はSATA SSDとしては標準的ではあるものの、PCIe接続が主流である最近のPCとしては物足りなさを感じます。また、SSDそのものの信頼性についても不明な部分です。万が一に備えて、こまめにバックアップを取ってください。

256GB SATA SSDのアクセス速度計測結果
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)のテストでは目標値ギリギリ、コンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。やはり軽めの作業向きです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 | 7295 7142 8052 8228 10616 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 | 4894 4879 7166 7774 10003 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 | 2504 2515 3585 3687 6018 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(格安PC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶Inspiron 15 3535 | Ryzen 3 7320U / 8GB / Radeon |
▶Lenovo V14 Gen 4 | Ryzen 5 7520U / 8GB / Radeon |
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、高負荷時にやや大きく聞こえます。待機中でもわずかに聞こえますが、個人的には気になるほどではありませんでした。ただし無音というわけではないので、それなりの音が出ると考えたほうがいいでしょう。
駆動音の計測結果
電源オフ | 37.7dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 40.4dBA前後 | カラカラとファンの回る音が聞こえる。ハッキリと聞こえるが、うるさくは感じない |
高負荷時 | 45.7dBA前後 | ファンの回転音が高音域に変わり、排気音が目立つ |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
とにかく安いIntel N100搭載機
ほかのIntel N100搭載機に比べるとベンチマーク結果はほどほどで、機能面もやや非力。拡張性も高くありません。VGA(D-sub15ピン)端子に対応している点は特徴的ですが、これで選ぶ人はそう多くはないでしょう。
とは言え値段が安い点は、大きな魅力です。タイミングによっては1万円台半ば(実売価格または実質価格)で買えることがあり、PCとしてはとても気軽に入手できます。軽作業用に使うのはもちろん、工作・改造などの遊びに使ったり、ごくごく簡易的なサーバーに使ったり、サイネージ的に写真や動画の保存・表示用使ったりなど、いろいろな使い道が考えられるでしょう。
またCHUWIは比較的「ちゃんとしているメーカー」である点もポイントです。中華系インディーズメーカーのなかでは実績もあり、ライセンス周りでの問題が発生したこともありません(ほかのメーカーはネット認証やクリーンインストールが必要な場合あり)。意味で、ほかの格安ミニPCよりも安心感があります。そのあたりを考慮するなら、十分アリです。
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