マイクロソフトからSurfaceシリーズの新モデルとして、2-in-1ノートパソコンの「Surface Book」が発表されました。米国での発売予定日は10月26日で、本日10月7日から予約販売が開始されています。価格は下位モデル(Core i5、8GBメモリー、128GB SSD)が1499ドル(約18万円)から。日本での発売日および価格はまだ未定です。
スペックはメモリーとストレージの容量などが公開されていますが、CPUについては「第6世代(Skylake)のCore i5/Core i7」としか公開されていません。そこで公開された情報を元に、Surface Bookに搭載されているCPUを予測してみました。
https://little-beans.net/surface/
2015年10月23日 追記
海外のSurface Bookレビュー記事によると、CPUにはCore i7-6600U/Core i5-6300Uが搭載されているとのことです。
Intel HD Graphics 520を搭載しているSkylake世代のCore i5/Core i7は4種類
Surface BookのCPUを予測する手がかりとして、以下の情報が公開されています。
Surface Bookに搭載されているCPUに関する公式情報
- 第6世代(Skylake世代)のCore i5/Core i7
- 内蔵グラフィックス機能はIntel HD Graphics 520
現在リリースされているインテルのCPUのなかで、この条件に合うものはCore i7-6600UとCore i7-6500U、Core i5-6300U、Core i5-6200Uの4種類しかありません。それぞれのCPUのスペックは以下の表のとおりとなっています。
Skylake世代でHD Graphics 520を搭載しているCore i5/Core i7 | ||||
モデル | Core i5-6300U | Core i5-6200U | Core i7-6600U | Core i7-6500U |
---|---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/4 | |||
動作周波数 | 2.4GHz | 2.3GHz | 2.6GHz | 2.5GHz |
最大動作周波数 | 3GHz | 2.8GHz | 3.4GHz | 3.1GHz |
キャッシュメモリー | 3MB | 4MB | ||
TDP | 15 W | |||
vPro | ◯ | × | ◯ | × |
このなかからCPUを特定するカギとなるのが、インテルの「vProテクノロジー」です。これは企業向けの機能で、ザックリと説明すると企業ネットワークに接続したパソコンを効率的に管理するためのもの。もうちょっと詳しく知りたい方は、以下のページをご覧ください。
参考ページ
昨年発売されたSurface Pro 3では、CPUとしてCore i3-4020YとCore i5-4300U、Core i7-4650Uを搭載していました。このうちCore i5-4300UとCore i7-4650Uは、上記のvProテクノロジーに対応しています。マイクロソフトはSurfaceシリーズを個人向けだけではなくエンタープライズ(大規模な企業、公的機関など)向けとしても売り込みたい意図があるため、企業向けのvProテクノロジーに対応したCPUを採用しているのです。
Surface Bookで使われているであろう4種類のCPU候補のうち、vProテクノロジーに対応しているのはCore i5-6300UとCore i7-6600Uのふたつだけ。よって、Surface BookではCore i5-6300UとCore i7-6600Uが使われていると見ていいでしょう。
Surface BookとSurface Pro 3のCPU性能はどれくらい違うのか?
CPUが特定できたところで、Surface Pro 3で使われていたCPUと性能を比較してみましょう。それぞれのスペックは、以下の表のとおりです。
Surface BookとSurface Pro 3のCPUの違い | ||||
モデル | Core i5-6300U | Core i7-6600U | Core i5-4300U | Core i7-4650U |
---|---|---|---|---|
開発コード | Skylake | Haswell | ||
コア数/スレッド数 | 2/4 | 2/4 | ||
動作周波数 | 2.4GHz | 2.6GHz | 1.9GHz | 1.7GHz |
最大動作周波数 | 3GHz | 3.4GHz | 2.9GHz | 3.3GHz |
キャッシュメモリー | 3MB | 4MB | 3MB | 4MB |
TDP | 15 W | 15W | ||
グラフィックス機能 | Intel HD Graphics 520 | Intel HD Graphics 4400 | Intel HD Graphics 5500 |
コア数/スレッド数やTDPなどは変わりませんが、2世代違う(Haswell→Broadwell→Skylake)だけあって動作周波数が大きく異なります。ただしターボブースト時の最大動作周波数は微増している程度ですので、性能にそれほど大きな違いは出ないかもしれません。
下記のグラフは、さまざまなCPUのベンチマーク結果を掲載する「PassMark CPU Benchmarks」のデータを元に、各CPUのスコアをグラフ化したものです。参考までに、2015年秋冬モデルでよく使われているCore i7-6500UとCore i5-6200Uの結果も合わせてまとめています。Core i5-6300UとCore i7-6600Uはサンプル数(テストを実施したパソコンの台数)が少ないため、今後スコアが大きく変わる可能性がある(特にCore i5-6300U)ことをあらかじめご了承ください。
Core i7モデルに搭載されているGPUは?
Surface BookのCore i7モデルでは、外付けGPU(dGPU)としてNVIDIAのGeForceシリーズが搭載されています。外付けGPUはキーボード側に内蔵されいるため、タブレットスタイルで利用している際はCPU内蔵のグラフィックス機能が使われるとのことです。GPUをほかの機器に載せるというと、「Power Media Dock」を接続することでAMD Radeon HD 6650Mを利用できた、ソニー時代の「VAIO Z」が思い浮かびます。
そんな話はさておき、Surface Bookで使われているGPUに関しては、以下の情報が公開されています。
Surface BookのCore i7に搭載されているGPUに関する情報
- NVIDA製のGeForceシリーズ
- メモリーの種類はGDDR5
- 「AutoCAD」で3Dモデリングが可能
さすがにこの情報だけでは特定が難しいのですが、該当するGPUを考えてみましょう。まず上記のうち3番めの「AutoCADで3Dモデリングが可能」という条件ですが、これはあまり参考になりません。なぜなら「AutoCAD」は設計を行なうAutodesk社の3Dソフトですが、軽いデータならそれほど高いスペックは必要ないからです。どんなデータを扱うのかが明記されていないためどこまでの3D処理能力があるのか不明ですが、Surface Bookと同時に発売されたSureface Pro 4のCore i7モデルでも可能とされているので、実際の3D性能はそれほど高くないでしょう。
NVIDIA製のノートパソコン向けGPUには新旧合わせてさまざまなモデルがありますが、GPU名に「GTX」が付くゲーム向けのミドルレンジ~ハイエンド向けGPUはTDP(消費電力の大きさを表わす目安)が75W以上のものばかりです。CPUのTDPが15Wであることを考えれば、それほどTDPの高いGPUは採用しないものと思われます。そこでTDPが50W以下でメモリーにGDDR5が使われているGPUを調べてみたところ、以下のものが該当しました。
TDP50W以下でGDDR5メモリー搭載のノートパソコン向けGPU | |
GPU | TDP |
---|---|
GeForce GT 555M | 35W |
GeForce GT 630M | 33W |
GeForce GT 640M LE | 32W |
GeForce GTX 660M | 50W |
GeForce GT 745M | 45W |
GeForce GT 750M | 50W |
GeForce GT 755M | 50W |
いずれのGPUも2~3世代前のもので、性能的にも大したことはありません。重量級の3Dゲームをバリバリ楽しめるほどの性能はないでしょう。上記のなかでもっとも性能の高いと予想されるGeForce GTX 660Mでも、おそらくIntel Iris Pro程度(「3DMark」の「Fire Strike」で1500前後)の性能だと思われます。
ただし、もしかすると上記以外で見落としているGPUがあるかもしれません。 またNVIDIAは過去にPCメーカーにカスタマイズGPUを提供した実績がありますので、Surface BookでもカスタマイズGPUが使われている可能性があります。あくまでも妄想程度に考えてください。
「MacBook Pro」の2倍の性能ってホント?
マイクロソフトはSurface Bookを発表した際に、「性能はMacBook Proの2倍」と説明しました。外付けGPU搭載のCore i7モデルで比較した場合とのことですが、いったいどんなテストに対して2倍の性能差が出たのでしょうか?
CPUで見てみると、現在発売されている13インチMacBook Pro RetinaディスプレイモデルではCore i5-5257UかCore i5-5258UまたはCore i7-5557Uが使われています。15インチモデルでは、Core i7-4770HQかCore i7-4870HQです。2コア/4スレッドのCPUを搭載したSurface Bookが4コア/8スレッドのCPUを搭載した15インチMacBook Pro RetinaディスプレイモデルにCPU性能でかなうわけはありませんので(CPU性能に差がありすぎるため)、おそらく13インチモデルと比較して「2倍」と謳っているのでしょう。
PassMark CPU Benchmarksのスコアを見てみると、Surface Bookの上位CPUであるCore i7-6600Uと13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルの下位CPUであるCore i5-5257Uとでは、それほど大きな性能差はありませんでした。Core i7-6600Uはサンプル数が少ないため標準値ではなかったとしても、その差が突然2倍に広がるとは思えない結果です。
グラフィックス機能で見てみると、13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルの下位CPUであるCore i5-5257Uはグラフィックス機能にCPU内蔵のIntel Iris Graphics 6100を利用します。この内蔵GPUでは「3DMark」の「Fire Strike」のスコアが900~1000程度。前述のように「仮に」Surface Bookの外付けGPUがIntel Iris Pro程度(「3DMark」の「Fire Strike」で1500前後)だとしたら、グラフィックス性能は2倍程度になる可能性はあります。もしかすると、この結果を元に「2倍」と言っているのかもしれません。
追記:Maxwell世代のカスタムGPUを採用とのウワサ
海外サイトではSurface Book Core i7モデルに搭載される外付けGPUは、Maxwell世代でメモリー1GBのカスタムチップだという推測が掲載されています。
参考リンク
記事には「GTX 950相当の性能があるのではないか」とありますが、おそらくGTX 950Mのことでしょう。GTX 950はデスクトップPC向けのGPUですので、普通に3Dゲームを楽しめるレベルの性能です(3DMarkのFire Strikeで6000前後)。ノートPC向けのGTX 950Mならビデオメモリー2GBの場合で、3DMark Fire Strikeが3000~3200程度です。ビデオメモリーが少ないと性能は低くなりますので、実際にはGTX 950M搭載のノートPCよりも(グラフィックス面で)性能が劣る可能性があります。
追記2:GeForce 940M相当のカスタムGPUとの情報
海外サイト「PCWorld」のレビュー記事で、Surface Bookで利用した「GPU-Z」のスクリーンショットが公開されています。
参考リンク
- Surface Book Review: Microsoft reimagines the laptop, and it’s glorious (英語)
GPU名は「NVIDIA GeForce GPU」とされており、既存のGPU名は出てきていません。しかし「Shaders」が384基であることやそのほかのスペックから見ると、GeForce 940Mに近い構成なのではということです。
一般的に使われているGeForce 940Mはメモリーの規格がDDR3であるのに対し、Surface Bookではより高速なGDDR5が使われています。しかしメモリー容量が1GBしかありませんので、標準的なGeForce 940M搭載ノートPCよりもパフォーマンスが高いとは言えないかもしれません。
(追記ここまで)
ということで、今回はかなり強引ではありますが、Surface Bookで使われているCPUについて考察してみました。もし仮にグラフィックス性能がMacBook Promの「2倍」だとしたら、ゲームのプレーを目的としないSurface Bookではあまり意味のない表現でしょう。実際にはどの程度の性能なのか、発売後に行なわれるであろう各メディアのベンチマーク結果に注目したいと思います。