現在の格安ノートPC向けCPUは、Celeronシリーズが主流です。2018年春ごろからは最新のCeleron N4000/N4100がよく使われており、しばらくはこれらを搭載したノートPCがリリースされ続けるでしょう。
Celero N4000/4100を搭載した格安ノートPCのなかには、CPUを上位版のPentium Silver N5000に差し替えたモデルが用意されていることもあります。Celeronではちょっと不安に感じる人向けのラインナップですが、Celeron N4000/4100と比べてどれだけの違いがあるのかわからない人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事ではPentium Silver N5000の概要を紹介するとともに、実際にこのCPUを搭載したノートPCのベンチマーク結果と、そのほかのCPUとの性能の違いについて解説します。
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インテル製CPUの種類とPentiumの位置付け
「Pentium(ペンティアム)」とは、インテル製CPUのなかでも価格の安さを重視したCPUのブランド名です。2006年ごろまではハイエンド向けCPUとしてその名称が使われていましたが、インテルが「Core」シリーズを上位ブランドとして立ち上げてからは下位CPUに位置付けられています。
インテル製CPUの違い(性能の高い順) | ||
ブランド名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
Xeon(ジーオン) | 先端技術をふんだんに使った超高性能CPU | 企業向けサーバー、CG制作 |
Core i9(コアアイナイン) | 個人向けとしてはほぼ最高クラスの高性能なCPU。10~18コア | 高性能(ハイエンド)パソコン、ゲーム用パソコン |
Core i7(コアアイセブン) | かなり高性能な上級CPUで、処理速度が速い。2~8コア | 個人向け高性能(ハイエンド)パソコン、業務用パソコン |
Core i5(コアアイファイブ) | 中程度の性能と言われるが、処理速度は速い。2~4コア | 個人向けパソコンの標準モデル |
Core i3(コアアイスリー) | Core i5よりは劣るものの、十分実用的な性能。2コア | 廉価版モデル |
Core M(コアエム) | 性能はCore i3よりやや低いものの、省電力性能が高い。2コア | 2-in-1パソコン、タブレット |
Pentium(ペンティアム) | 性能をさらに落とした廉価版CPU。2~4コア | 低価格パソコン |
Celeron(セレロン) | 計算性能よりも省電力性能を重視した格安なCPU。2~4コア | 格安パソコン、一体型PC |
Atom(アトム) | 省電力性能に特化したCPU。2~4コア | タブレット、小型パソコン、スマートフォン、サーバー機器 |
Pentium Silverの「Silver」とは?
2017年にインテルは従来のPentiumシリーズを「Gold」と「Silver」の2種類に分類しました。それまでノートPC向けのPentiumシリーズはU/Y/Nのアルファベットで区別されていましたが、GoldとSilverの名称を加えることで、どれが上位のCPUであるかを明確にするのが狙いだと思われます。
Pentium Goldシリーズでは、Core i3/i5/i7シリーズのアーキテクチャ(CPUの製造方法)が用いられています。それに対してPentium Silverでは、Atomシリーズの流れを組むアーキテクチャが使われています。もともとAtomシリーズは計算性能よりも省電力性能を重視したCPUでしたから、Pentium Silverシリーズの性能も控えめ。SilverよりもGoldのほうが上位というのは、アーキテクチャによるパフォーマンスの違いによるものです。
ノートPC向けPentiumシリーズの分類
ブランド | シリーズ名 | 性能 | 主なCPU |
---|---|---|---|
Gold | Uシリーズ | 中 | Pentium Gold 4415U |
Yシリーズ | やや低い | Pentium Gold 4415Y Pentium Gold 4410Y |
|
Silver | Nシリーズ | 低 | Pentium Silver N5000 |
ただし現在のPentium Goldシリーズが2コア/4スレッドで動作するのに対し、Pentium Silverは4コア/4スレッドで動作します。そのためマルチスレッドを利用する処理では、Pentium SilverがPentium Goldをパフォーマンス面で上回る可能性があります。
Pentium Gold/Silverの主な仕様
Pentium Silver N5000 | Pentium Gold 4415Y | Pentium Gold 4410Y | Pentium Gold 4415U | |
---|---|---|---|---|
発売日 | 2017年第4四半期 | 2017年第2四半期 | 2017年第1四半期 | 2017年第1四半期 |
コア数/スレッド数 | 4/4 | 2/4 | 2/4 | 2/4 |
周波数 | 1.10GHz | 1.60GHz | 1.50GHz | 2.30GHz |
バースト周波数 | 2.70GHz | - | - | - |
TDP | 6W | 6W | 6W | 15W |
内蔵グラフィックス | HD Graphics 605 | HD Graphics 615 | HD Graphics 615 | HD Graphics 610 |
グラフィックス動作周波数 | 200MHz | 300MHz | 300MHz | 300MHz |
グラフィックス最大動作周波数 | 750MHz | 850MHz | 850MHz | 950MHz |
Gemini Lakeとは?
Celeron N4000やPentium Silver N5000は2017年12月に発表されたCPUで、このとき同時に発表された一連のCPUをインテルの開発コード名から「Gemini Lake(ジェミニレイク)世代」と呼びます。
Gemini Lake世代のCPUには、デスクトップPC向けとノートPC向けがそれぞれ3種類用意されています(2018年8月時点)。ノートPC向けのラインナップは、以下の3種類です。
Gemini Lake世代のCPU(ノートPC向け)の特徴
Celeron N4000 | Celeron N4100 | Pentium Silver N5000 | |
---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/2 | 4/4 | 4/4 |
周波数 | 1.1GHz | 1.1GHz | 1.1GHz |
最大動作周波数 | 2.60GHz | 2.40GHz | 2.70GHz |
内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics 600 | Intel UHD Graphics 605 |
ちなみに、ここ最近の格安PC向けCeleron/Pentiumの開発コードは以下のとおりです。覚える必要はありませんが、こういう呼び名があるということは知っておくといいでしょう。
参考:Atom系Celeron/Pentiumの開発コード
開発コード | 読み方 | 発表時期 | 代表的なCPU |
---|---|---|---|
Gemini Lake | ジェミニレイク | 2017年12月 | Celeron N4100、Celeron N4000 |
Apollo Lake | アポロレイク | 2016年9月 | Celeron N3450、Celeron N3350 |
Braswell | ブラスウェル | 2014年4月 | Celeron N3160、Celeron N3060、Celeron N3050 |
Pentium Silver N5000のベンチマーク結果
今回Pentium Silver N5000の性能を計測するにあたって、デルのVostro 15 3000(3572)エントリー・プラスモデルを使用しました。
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現在のところテストを行なったのはVostro 15 3000(3572)1台であるため、かならずしもこの結果がPentium Silver N5000の性能を正確に表わしているわけではありません。ベンチマーク結果はメモリーやストレージの構成、本体の冷却性能やチューニング、環境、タイミングなどによって大きく変わることがあります。あくまでも、参考程度に捉えてください。
CINEBENCH R15ベンチマーク結果
CINEBENCH R15は、CPUの計算性能を評価するベンチマークソフトです。3D CGのレンダリング速度から、シングルコア/マルチコア使用時のCPU性能を評価します。コア数(スレッド数)とクロック(動作周波数)によってスコアが派手に変わるため性能を捉えやすくPCのレビュー記事ではよく使われますが、かなずしもCPUの総合的な計算性能を表わしているわけではない点に注意してください。
CPU性能比較(マルチコア)
名称 | 開発コード | コア数 | CINEBENCH R15スコア マルチコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
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Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
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Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
|
Pentium Silver N5000 | Gemini Lake | 4 |
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Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
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Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
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Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
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Pentium Gold 4415Y | Kaby Lake | 2 |
|
Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
|
Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
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CPU性能比較(シングルコア)
名称 | 開発コード | コア数 | CINEBENCH R15スコア シングルコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
|
Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
|
Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
|
Pentium Silver N5000 | Gemini Lake | 4 |
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Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
|
Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
|
Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
|
Pentium Gold 4415Y | Kaby Lake | 2 |
|
Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
|
Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
|
当然といえば当然ですが、CINEBENCH R15ではPentium Silver N5000がCeleronシリーズを上回る結果となりました。また2世代前のCore i3-6006U(2016年第4四半期リリース)とほぼ同程度のスコアが出ています。ノートPC全体としては中の下クラスですが、3~5万円台の格安ノートPC向けとしては高性能です。
PassMark PerformanceTestベンチマーク結果
PassMark PerformanceTestはPCの性能を各パーツごとに評価するベンチマークソフトです。ベンチマーク結果は5種類のスコアで表わされるのですが、そのなかのひとつ「CPU Mark」で総合的なCPU性能を把握することができます。この結果は開発元であるPassMark SoftwareのCPU Benchmarksに送信され、ほかのCPUとスコアを比較可能です。
CPU Markでは整数演算や浮動小数点演算のほかに、SSE(拡張命令)や物理演算、データ圧縮などのテストも含まれます。前述のCINEBENCH R15よりも、総合的なCPU性能を計測できると言えるでしょう。
CPU性能比較(CPU Mark)
名称 | 開発コード | コア数 | PassMark CPU Markスコア |
---|---|---|---|
Core i7-8550U | Kaby Lake-R | 4 |
|
Core i5-8250U | Kaby Lake-R | 4 |
|
Core i7-7500U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i5-7200U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i3-7100U | Kaby Lake | 2 |
|
Core i3-6006U | Sky Lake | 2 |
|
Pentium Silver N5000 | Gemini Lake | 4 |
|
Celeron N4100 | Gemini Lake | 4 |
|
Pentium Gold 4415Y | Kaby Lake | 2 |
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Celeron N3450 | Apollo Lake | 4 |
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Celeron 3865U | Kaby Lake | 2 |
|
Celeron N4000 | Gemini Lake | 2 |
|
Celeron N3350 | Apollo Lake | 2 |
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PassMarkではCore i3-6006Uよりもスコアが20%程度下がったものの、全体的には中の下クラスという位置付けは変わりません。順位の違いは多少あるものの3種類のテストでほぼ同じ結果が出ていることから、性能的にはざっくりと「Celeron<Pentium<Core i3」と考えるといいでしょう。
ちょっと興味深いのは、Surface Goで使われているPentium Gold Silver 4415Yよりもスコアが高い点です。本来であればSilverよりもGoldのほうが格上のはずですが、すべてのCPUテストでPentium Silver N5000がPentium Gold 4415Yを上回りました。ベンチマーク結果はPCのサイズや冷却性能によって変わるため、一概にPentium Silver N5000のほうが高性能であるとは言えません。しかし、そこそこの性能があるとは言えるでしょう。もっとも、Pentium Gold 4415Yの性能が低すぎるという捉え方もあるのですが。
さらに前の世代のCPUについては手元にデータがないため、前述のPassMark CPU Marksのデータを参照しました。Pentium Silver N5000は4年前のCore i3-4005Uを上回る性能であることがわかります。
旧世代のCPUとの性能比較(CPU Mark)
名称 | 開発コード | コア数 | PassMark CPU Markスコア |
---|---|---|---|
Core i7-5500U | Broadwell(2015) | 2 |
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Core i5-5200U | Broadwell(2015) | 2 |
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Core i3-5005U | Broadwell(2015) | 2 |
|
Core i7-4500U | Haswell(2014) | 2 |
|
Core i5-4200U | Haswell(2014) | 2 |
|
Core i3-4005U | Haswell(2014) | 2 |
|
Pentium Silver N5000 | Gemini Lake | 4 |
|
Pentium Silver N5000のグラフィックス性能
3Dグラフィックス性能の計測には、3DMarkのFire Strikeを利用しました。これはゲーミング性能を計測するためによく使われるテストで、Direct X11を使用したフルHD(1920×1080ドット)時のパフォーマンスを計測します。
内蔵グラフィックス機能による3D性能の比較
名称 | グラフィックス機能 | 3DMark Fire Strikeスコア |
---|---|---|
Core i7-8550U | Intel UHD Graphics 620 |
|
Core i5-8250U | Intel UHD Graphics 620 |
|
Pentium Gold 4415Y | Intel HD Graphics 615 |
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Core i3-7100U | Intel HD Graphics 620 |
|
Celeron 3865U | Intel HD Graphics 610 |
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Pentium Silver N5000 | Intel UHD Graphics 605 |
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Celeron N4100 | Intel UHD Graphics 600 |
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Celeron N4000 | Intel UHD Graphics 600 |
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Celeron N3450 | Intel HD Graphics 500 |
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Celeron N3350 | Intel HD Graphics 500 |
|
グラフィックス性能についてはCore i系CPUのほうが、Atom系CPUよりも有利です。とは言えPentium Silver N5000のIntel UHD Graphics 605は1世代前のCeleron 3865Uに迫る結果が出ています。格安ノートPC向けとしては、比較的高めの結果です。
しかし人気の3Dゲームをプレーできるほどではありません。ゲーム系ベンチマークテストを試したところ、ごく軽めのドラクエ10ですらちょっと厳しい結果となりました。いちおう「普通」という評価ですが、数値としてはかなり低めです。
ゲーム系ベンチマーク結果(1280×720ドット)
FF14:紅蓮のリベレーター(DX11) ※中量級 | |||
---|---|---|---|
最高品質 | 高品質(ノートPC) | 標準品質(ノートPC) | |
595(動作困難)※3.245 FPS | 877(動作困難)※5.340 FPS | 1113(設定変更が必要)※7.239 FPS | |
ドラゴンクエストX ※軽い | |||
最高品質 | 標準品質 | 低品質 | |
1812(重い) | 3225(普通) | 3286(普通) |
ただしWindows 10向けに作られたUWPアプリや2D描画主体のゲーム、軽めのブラウザーゲームであれば問題なくプレーできるでしょう。ゲームはあくまでもちょっとした息抜き程度で考えるほうが無難です。
格安PC向けとしては上位クラス
ということで、今回はPentium Silver N5000の概要とベンチマーク結果について解説しました。
Core i5/i7などの高性能CPUと比べるとさすがにパフォーマンスは劣りますが、3~5万円台の格安ノートPC向けとしてはなかなかの性能です。低スペックPCを使いこなすには多少のコツが必要ですが、ネットの調べ物やメール、動画視聴、簡単な文書作成には十分。Celeron N4000ではちょっと不安だけど、安さにはこだわりたいという人におすすめです。
Pentium Silver N5000搭載ノートPCのレビュー&解説記事
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