デルの『Inspiron 14 ノートパソコン(5435)』(以下、”Inspiron 14 5435″)は、14インチディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。AMD Zen3世代のモバイルRyzen 7030Uシリーズ搭載で、高いパフォーマンスを実現。値段も比較的安く、総合的には高コスパなモデルに仕上がっています。

Inspiron 14 5435
上位モデルでCPUテストを行なったところ、非常に優秀な結果が出ました。しかし、メモリーやSSDがひと世代前の規格で、わずかながらにパフォーマンスに影響しています。とは言え一般的な作業であれば、特に気にする必要はないでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

Inspiron 14 5435
スペック
発売日 | 2023年3月3日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
ディスプレイ | 14インチ1920×1200ドット、WVA(広視野角パネル)、250nit、45% NTSC、非光沢 |
CPU | Ryzen 5 7530U / Ryzen 7 7730U |
メモリー | 8 / 16GB LPDDR4x-4266 ※オンボード増設不可 |
ストレージ | 256GB~1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.3 |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力 / USB PD対応)×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×1、HDMI1.4(最大1920×1080@60Hz)、SDメモリーカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅314mm、奥行き226.6mm、高さ16.49~19.50mm / 約1.59kg |
バッテリー | 4セル54Wh ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン

Inspiron 14 5435の外観。本体カラーはプラチナシルバーとダークリバーブルーの2色 ※写真はプラチナシルバー

天板はアルミ製。表面はツヤ消しでサラサラとした手触り。指紋の跡はあまり目立ちません。高級感のある仕上がりです

設置面積は幅314mm×奥行き226.6mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。A4サイズよりひと回り大きい程度で、14インチタイプとしてはややコンパクトといったところ

最厚部の高さは実測で19.2mm(突起部を除く)

底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは20.8mm。スリムではないものの、厚くも感じません

重さは実測で1.565kg。最近の14インチとしてはやや重めの印象です

ディスプレイを開いた状態

キーボードのキーはグレー(正確には「タイタングレー」)。パームレストはアルミ製で高級感のある仕上がりです

ディスプレイのベゼル(枠)はやや細め

インターフェース構成。Type-CはDP/PD対応ですが、Thunderboltには対応していません。またHDMIによる映像出力は最大で1920×1080ドット60Hzまでなので注意してください

ディスプレイ上部のカメラはプライバシーシャッター付き。動画撮影は1920×1080@30fpsで、画角は標準的な1080pカメラと同等。ビデオ会議事には背景がそれなりに映り込みます

電源ボタンは指紋センサー内蔵。キー入力中に間違って押すとスリープモードへ移行するので、電源ボタンの設定で反応しないように変更するといいでしょう

付属の電源アダプターは65Wの丸口タイプ。重さは334g

スピーカーはキーボード両脇に配置。サウンドはややドンシャリ傾向で、音声はクリアー。低音~中音域の厚みもそこそこあり、ノートPCとしてはなかなか高音質です。動画の音声は、ほかのノートPCに比べてかなり自然に聞こえます

排気口はこの部分。排気がディスプレイに直接当たります

底面部は樹脂(プラスチック)製
ディスプレイについて

画面サイズは14インチで、解像度は1920×1200ドット

色域は45% NTSC(sRGB換算で62.5%)で、格安ノートPCで使われているパネルと同等レベルです。色はそれほど鮮やかではないものの、文字中心の作業であれば問題なく使えるでしょう

明るさは250nit。数値的にはやや低めですが、テスト機では特に暗くは感じませんでした。ただしパネルは個体差が大きい場合があるので、物によっては多少の違和感があるかもしれません
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列。バックライトに対応しています

Enterキー周辺で一部のキーが隣接しています

Enterキー周辺にややクセがあるものの、キーのサイズは十分な大きさ

キーを押した瞬間にカクッとしたクリック感があるものの、ストロークが浅い上に押下圧も軽め。キーを押し込むようにして入力すると、たわみと底打ち感が感じられます。指をあまり上げ下ろしせずに、軽い力で入力する人向きです ※写真は同型のInspiron 14 5430

タイプ音は軽い力でも聞こえますが、高音域のカチャカチャとした音が聞こえないので不快さはありません。ただし指を打ち下ろすように入力するとパチパチと響くので、軽めのタッチ推奨です
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 7730U |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「MyDell」の「電源」-「温度管理」をを「超高パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、AMD Zen3世代のRyzen 5 7530U(6コア、TDP15W)およびRyzen 7 7730U(8コア、TDP15W)が使われています。Ryzen 5よりもRyzen 7のほうが高性能です。
Ryzen 7 7730U搭載の試用機でCPUベンチマークを行なったところ、現行のCPUのなかでは非常の優秀な結果が出ました。同じCPUの平均値を大きく上回っていることから、熱などによる影響は少ないと考えていいでしょう。大作ゲームや高度な動画編集には向きませんが、おおよその作業については快適にこなせるはずです。
Ryzen 5モデルについては、おそらく「中の上」クラスの結果が出ると思われます。Ryzen 7よりも性能は落ちますが、一般的な作業であればこちらで十分です。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Inspiron 14 (Ryzen 7 7730U) | 21075 |
Ryzen 7 7735U | 21043 |
Core i5-1340P | 20760 |
Core i7-1360P | 19623 |
Ryzen 7 7730U | 18979 |
Core i5-1335U | 18240 |
Ryzen 5 7535U | 17163 |
Ryzen 5 7530U | 16196 |
Core i7-1355U | 15636 |
Core i3-1315U | 13033 |
Ryzen 3 7330U | 10909 |
Core i3-N305 | 10265 |
Ryzen 5 7520U | 9759 |
Ryzen 3 7320U | 9249 |
Intel N100 | 5638 |
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-1360P | 3670 |
Core i5-1335U | 3665 |
Core i7-1355U | 3606 |
Core i3-1315U | 3573 |
Inspiron 14 (Ryzen 7 7730U) | 3353 |
Ryzen 7 7735U | 3289 |
Ryzen 7 7730U | 3228 |
Ryzen 5 7530U | 3136 |
Ryzen 5 7535U | 3105 |
Ryzen 3 7330U | 3089 |
Ryzen 5 7520U | 2573 |
Ryzen 3 7320U | 2485 |
Core i3-N305 | 2279 |
Intel N100 | 1971 |
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphicsが使われます。Ryzen 7 7730U搭載の試用機で3Dベンチマークを行なったところ、CPU内蔵タイプとしては中位クラスの結果でした。ゲームやグラフィックスソフトで多少の効果が見込めますが、大作ゲームや高度な動画編集を行なえるほどではありません。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 | 3445 |
Radeon(RDNA 3) | 2862 |
Radeon 680M(Zen3+) | 2211 |
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) | 1528 |
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) | 1302 |
Inspiron 14(Zen3,Ryzen 7) | 1235 |
Radeon (Zen3) | 1204 |
Iris Xe(Core i7+DDR4) | 1149 |
Radeon (Zen2+) | 1000 |
Iris Xe(Core i5+DDR4) | 977 |
UHD(Core i3) | 900 |
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は大きく上回っており、一般的な使い方であれば快適に利用できるでしょう。ただし同じモバイルRyzen 7030Uシリーズを搭載した他機種の結果を下回っている点がやや気になります。もしかするとメモリーやストレージの速度が影響しているのかもしれません。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 | 10387 10616 10917 9869 10258 10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 | 9640 10003 9572 8854 7417 7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 | 5693 6018 6536 8298 6026 6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公開されていません。そこで標準収録ソフト「MyDell」の電源設定を標準である「最適化」に変更してビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から11時間16分で休止状態へ移行しました。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。非常に長いわけではないものの、高いパフォーマンスを保ちながらこれだけもてば十分でしょう。
バッテリー駆動時間の計測結果(Ryzen 7モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | ※非公開 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 11時間16分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 51分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間18分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
チープさはあるけど高コスパ
記事執筆時におけるInspiron 14 5435の価格は、売れ筋のRyzen 5+16GBメモリーモデルで7万円台半ば、同じく売れ筋のRyzen 7+16GBメモリーモデルで約9万円。この価格では、それほど安いわけではありません。しかしデルでは年に何回か、「意味がわからないほど安い」セールが行なわれることがあります。そのタイミングであれば、非常にお得に入手できるでしょう。
ただ、前のモデルや他社製品と比べてややチープに作られている部分があります。仕上がりは同価格帯の他社製品より優れているものの、メモリーやSSDの規格がひと世代古く、パフォーマンスの面でわずかに劣ります。また前モデルと比べるとメモリーがスロット形式からオンボード形式になり、さらにHDMI出力が最大でもフルHD止まりになってしまいました。
マイナス面については非常にマニアックな部分であるため、多くの人にはほとんど気にならないと思います。ただ微妙な違いが気になる人は、その点に注意してください。

Inspiron 14 5435
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