Celeron N4000およびCeleron N4100は、2017年に発表された格安ノートPC / タブレットPC向けのCPU(SoC)です。2018年春ごろから搭載機種が出回りはじめ、2020年1月時点でも3~5万円台のPCを中心に使われています。
Celeron N4000 / N4100は計算性能よりも価格の安さや省電力性能を重視しているため、パフォーマンスはいまいちです。2020年1月時点で6~10万円程度で販売されているノートPCのCPUと比べると、性能はグッと劣ります。
CPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-1065G7 |
11872
|
Core i5-1035G4 |
11379
|
Core i7-10510U |
10863
|
Core i5-10210U |
9988
|
Core i7-8565U |
9814
|
Core i5-8265U |
8593
|
Ryzen 5 3500U |
8447
|
Celeron N4100 |
2569
|
Celeron N4000 |
1553
|
※スコアは当サイト計測値の平均
性能が低いとは言え、ネットの調べ物やメール、動画視聴、ちょっとした文書作成にはなんとか使えます。動作の軽いWindows 10アプリ (UWPアプリ)についても、よっぽど重いものでなければ問題なく使えるでしょう。
ただしそれは、Windows 10のさまざまな高速化設定を行なった上でのこと。特に4GBメモリーとHDD (ハードディスク)またはeMMCを搭載したモデルではこれらのスペックの低さが大きなボトルネックとなり、ちょっとした処理でも非常に時間がかかります。eMMC搭載モデルなら起動は速いものの、Windows Updateやアプリの更新などに時間がかかりがちです。これらを解決できるパソコンに詳しい人にとってはCeleron N4000 / N4100搭載PCは高コスパですが、PC初心者にはおすすめしません。
この記事ではCeleron N4000 / N4100搭載ノートPCのベンチマーク結果を紹介しながら、ほかのCPUと比べてどのくらいの性能なのかについて解説します。
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インテル製CPUの種類とCeleronの位置付け
「Celeron(セレロン)」とは、インテル製CPUのなかでも特に価格の安さを重視したCPUのブランド名です。価格が安いだけあって性能は控えめですが、消費電力が少ないというメリットもあります。
インテル製CPUの違い(性能の高い順) | ||
ブランド名 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
Xeon(ジーオン) | 先端技術をふんだんに使った超高性能CPU | 企業向けサーバー、CG制作 |
Core i9(コアアイナイン) | 個人向けとしてはほぼ最高クラスの高性能なCPU。10~18コア | 高性能(ハイエンド)パソコン、ゲーム用パソコン |
Core i7(コアアイセブン) | かなり高性能な上級CPUで、処理速度が速い。2~8コア | 個人向け高性能(ハイエンド)パソコン、業務用パソコン |
Core i5(コアアイファイブ) | 中程度の性能と言われるが、処理速度は速い。2~4コア | 個人向けパソコンの標準モデル |
Core i3(コアアイスリー) | Core i5よりは劣るものの、十分実用的な性能。2コア | 廉価版モデル |
Core M(コアエム) | 性能はCore i3よりやや低いものの、省電力性能が高い。2コア | 2-in-1パソコン、タブレット |
Pentium(ペンティアム) | 性能をさらに落とした廉価版CPU。2コア | 低価格パソコン |
Celeron(セレロン) | 計算性能よりも省電力性能を重視した格安なCPU。2~4コア | 格安パソコン、一体型PC |
Atom(アトム) | 省電力性能に特化したCPU。2~4コア | タブレット、小型パソコン、スマートフォン、サーバー機器 |
Gemini Lakeとは?
Celeron N4000 / N4100は2017年12月に発表されたCPUで、このとき同時に発表された一連のCPUをインテルの開発コード名から「Gemini Lake(ジェミニレイク)世代」と呼びます。
Gemini Lake世代のCPUには、デスクトップPC向けとノートPC向けがそれぞれ3種類用意されています(2018年8月時点)。ノートPC向けのラインナップは、以下の3種類。このなかでもっともよく使われているのがCeleron N4000です。
Gemini Lake世代のCPU(ノートPC向け)の特徴
Celeron N4000 | Celeron N4100 | Pentium Silver N5000 | |
---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 2/2 | 4/4 | 4/4 |
周波数 | 1.1GHz | 1.1GHz | 1.1GHz |
最大動作周波数 | 2.60GHz | 2.40GHz | 2.70GHz |
内蔵グラフィックス | Intel UHD Graphics 600 | Intel UHD Graphics 605 |
ちなみに、ここ最近の格安PC向けCeleronの開発コードは以下のとおりです。覚える必要はありませんが、こういう呼び名があるということは知っておくといいでしょう。また2019年に後継のCeleron N4020 / N4120が発表されましたが、2020年1月時点で個人向けの搭載機種はリリースされていません。
参考:Celeron系の開発コード
開発コード | 読み方 | 発表時期 | 代表的なCPU |
---|---|---|---|
Gemini Lake Refresh | ジェミニレイク リフレッシュ | 2019年11月 | Celeron N4120、Celeron N4020 |
Gemini Lake | ジェミニレイク | 2017年12月 | Celeron N4100、Celeron N4000 |
Apollo Lake | アポロレイク | 2016年9月 | Celeron N3450、Celeron N3350 |
Braswell | ブラスウェル | 2014年4月 | Celeron N3160、Celeron N3060、Celeron N3050 |
Celeron N4000/N4100のベンチマーク結果
続いて、当サイトで実施したCPUベンチマークテストの結果を紹介します。なおベンチマーク結果は各機種の平均値であり、Celeron N4000 / N4100本来の性能を正確に表わすものではありません。また結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などにより大きく変わることがあることをあらかじめご了承ください。
一般ノートPC向けCPUとの比較
ここ1~2年でよく使われているスタンダードノートPC / モバイルノートPC向けCPUと比べると、Celeron N4000 / N4100の性能は格段に劣ります。上位版で4コアのCeleron N4100のほうが2コアのCeleron N4000よりも優れているものの、主流であるCore i5の1/3以下のスコアです。
CPUの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-10710U |
13685
|
Core i7-1065G7 |
11872
|
Core i5-1035G4 |
11379
|
Core i7-10510U |
10863
|
Core i5-10210U |
9988
|
Core i7-8565U |
9814
|
Core i5-1035G1 |
9164
|
Core i7-8550U |
9009
|
Core i5-8265U |
8593
|
Ryzen 5 3500U |
8447
|
Core i5-8250U |
8385
|
Core i3-8145U |
5549
|
Core i3-10110U |
5534
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Celeron N4100 |
2569
|
Celeron N4000 |
1553
|
※スコアは当サイト計測値の平均
最近はCore i5 / Ryzen 5搭載ノートPCの値段が下がり、5~6万円台で買えるようになりました。Core i3 / Ryzen 3なら3~4万円台です。そのような現状において、3~4万円台で販売されているCeleron搭載ノートPCの価値は低くなりつつあります。
格安ノートPC向けCPUとの比較
2~4万円台の格安ノートPCで使われているCPUと比べても、Celeron N4000 / N4100の性能はそれほど高いわけではありません。上位のCeleron N4100であれば富士通やNEC、Dynabookなどの下位モデルで使われているCeleron 4205Uを上回りますが、それでも「下の中」クラスです。
CPUの性能比較(総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i3-8145U |
5549
|
Core i3-10110U |
5534
|
Core i3-8130U |
5534
|
Athlon 300 |
4703
|
Ryzen 3 3200U |
4609
|
Core m3-8100Y |
4172
|
Core i3-7020U |
3769
|
Pentium N5000 |
2650
|
Celeron N4100 |
2569
|
Celeron 4205U |
2026
|
Celeron 3865U |
2016
|
Celeron N4000 |
1553
|
Celeron N3350 |
1254
|
※スコアは当サイト計測値の平均
以前はCeleron N4000 / N4100でも、格安PC向けCPUのなかでは悪くない位置でした。しかし2019年半ばあたりからCore i3 / Ryzen 3搭載ノートPCの価格が急激に下がり、その影響でCeleronシリーズの価値も急落しています。
Celeron N4000/N4100のグラフィックス性能
Celeron N4000 / N4100ではグラフィックス機能として、CPU内蔵のIntel UHD Graphics 600が使われます。最近はCPU内蔵グラフィックス機能の性能が上がってきたとは言え、重量級のゲームを楽しむには全然性能が足りません。特に価格の安いCeleronはCore iシリーズよりもはるかにグラフィックス性能が低く、3Dゲームを楽しむにはとても厳しい性能です。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8689
|
GTX 1050 |
6008
|
MX250 |
3606
|
Iris Plus(Core i7) |
2846
|
Radeon Vega 8 (Ryzen 5) |
2344
|
Iris Plus(Core i5) |
2136
|
UHD (Ice Lake Core i5) |
1396
|
UHD (Comet Lake Core i7) |
1335
|
UHD 620 (Core i7) |
1265
|
UHD (Comet Lake Core i5) |
1263
|
UHD 620 (Core i5) |
1186
|
UHD 620 (Core i3) |
975
|
UHD 600 (Celeron) |
422
|
※スコアは当サイト計測値の平均
価格以外の面で選ぶならアリ
前述のとおり現在 (2020年1月時点)は3~4万円台でCore i3 / Ryzen 3搭載ノートPC、5~6万円台でCore i5 / Ryzen 5搭載ノートPCを購入できます。値段と性能だけで考えるなら、Celeron N4000 / N4100のコスパは以前ほど高くありません。
ただし、値段以外の部分で気に入ったのなら購入するのはアリです。たとえば信じられないほど薄いとかあり得ないほど軽いとか、価格がほぼ2万円程度とかオフィス付きなのに3万円程度とか (オフィスのライセンス的に不安がありますが)。
実際のところCPUよりもメモリー容量やストレージ性能がボトルネックとなるケースが多いので、8GBメモリーや高速なSSDを搭載して3万円台なら検討してもいいでしょう。ただパフォーマンスを重視するのであれば、予算を少し追加してCore i5 / Ryzen 5搭載モデルを購入したほうが幸せになれると思います。
*
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